New business Column
新規事業コラム
2021.07.28
事業立ち上げ&推進

新規事業のマーケティング戦略とは?十分な売上が取れる施策とは

さて、今回は新規事業のマーケティングにおける取り組み方についてご紹介したいと思います。

実は新規事業のトライアルほどマーケティング戦略の基本が要求されるシーンはありません。少し前のサポートとなりますが、ご支援しているメーカーでは自社の優れた技術を背景に、試作機をつくり、病院という彼らにとっては未知の市場に打って出ようとしていました。
病院市場を見る限り、彼らの持つ優位な技術を利用して市場に進出している企業はありませんでした。時流適応という点から考えても、その機械が提供するソリューションはとても興味深いテーマに見えました。競合メーカーは既に進出しているものの、ベースとなる技術は全く異なり、ビジネスモデルは非の打ちどころがなさそうでした。

しかしこのビジネスモデルはあやうく失敗しかけます。とても単純な話なのですが、病院市場が小さすぎたのです。
私がお手伝いを始めた時には既に病院市場への参入は決定しており、どうすることもできませんでした。ターゲットとすべき病床数を保有する病院は全国でどのくらい存在するのか、また、その中で一定のシェアを確保できた場合の売上予測はどのくらいになるのか、をシミュレーションした時に、私は愕然としました。
このメーカーでは自社の保有する技術力に過信するあまり、マーケットを冷静に観察しようとするマーケティング・マインドが欠如していたのです。

さらに競合メーカーの動きを調べてみました。驚いたことに先行メーカーのすべてが病院市場は派生マーケットと位置づけており、コンシューマー市場もしくは他業種をメイン市場としていたのです。他業種や個人ユーザーが使用しているシーンを見るか、あるいは人づてに聞いて、「これは病院でも使えるのではないか」と考えた事務長からのお問合せに応える形で販売している企業がほとんどであるということがわかりました。

私に限らず、当メルマガ執筆のメンバー達が言い続けていることですが、マーケティング戦略の重要性は言うに及びません。特に新規事業を立ち上げる際には十分なリスクヘッジが必要であり、そのためにはマーケティングアプローチが必須なのです。

1.【外部】マクロ環境を分析する(PEST分析など)
2.【外部】ミクロ環境を分析する(5FORCE分析など)
3.【外部】競合企業のポテンシャル・打ち手を分析する
4.【外部】市場ニーズを知る(顧客インタビューなど)
5.【内部】自社を分析する(バリューチェーン・SWOT分析など)

以上のような分析フェーズを踏襲して、はじめて

6.基本戦略フレーム策定
7.市場のセグメンテーションとターゲティング
8.自社の製品・サービスポジショニング
9.4Pのマーケティングミクス

という戦略立案フェーズに入るべきです。

これまでのサポート経験から申し上げれば、もちろん例外企業はたくさんありますが、特にメーカーの場合はややもすると自社の技術に対する誇りから、テクノロジー・オリエンテッドな立場で戦略を立案されることが多く、マーケティングを軽視される傾向にあるようです。つまり上記のステップでは、いきなり8か9から入ってしまわれるメーカーがいかに多いかを目の当たりにしてきました。

さて後日譚となりますが、最終的にこのビジネスには「カミカゼ」が吹き、事なきを得ます。皮肉なことですが、何と試作機の最終テスト段階でトラブルが起こったのです。
このため市場投入が大幅に遅れ、その結果、市場調査と競合調査を徹底的に行う時間を確保することができました。そして十分に練り上げたターゲット市場を再設定し、マーケティングミクスを行うことで、特定市場でNO.1のシェアを獲得するにいたりました。
この時の新規事業プロジェクトのリーダーや主要メンバーとは今でも連絡を取りあっていますが、現在では私以上にマーケティングの重要性を感じていらっしゃるようです。


執筆: B-search

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