一般的に利益率が低いとされる食品小売り業界で、なんと営業利益率20%超を達成している上場企業があります。
それが、株式会社ファンデリーです。
このコラムでは、営業利益率20%超を達成できた、ファンデリー社の磨き込まれたビジネスモデルを紹介します。
Table of Contents
1.一般の弁当と何が違う?
ファンデリー社の主力事業を簡単に説明すると、「健康に課題を抱えるお客さんに、カロリーや塩分などの栄養価を調整した冷凍弁当を届け、栄養士と一緒に数値改善を目指す」というものです。いわゆる弁当に関する業界の中でも、①お客さんのニーズが健康課題の解決であること、②冷凍であること、③宅配であること、が特徴です。
①お客さんのニーズ
健康改善に特化しているので、一般の弁当のように、例えば「昼ごはんを手軽に済ませたい」といったものとは異なります。そのようなニーズに合わせて、ネットワークとサービスに工夫をしています。
ネットワーク
医療機関とのネットワークは、ファンデリーの圧倒的な強みの1つです。医療機関は、健康に課題を抱える人が通る「関所」なのです。2万か所以上の医療機関などに自社カタログをおいてもらっているので、安定的にお客さんが集まるのです。
サービス
また、ただ弁当を届けるだけでなく、サービスにも力を入れています。40人以上の栄養士が、お客さんに寄り添って数値改善のサポートをします。数値改善は辛く険しい道のりですので、一人一人に担当栄養士が寄り添ってくれることで継続して頑張れるのです。また、この仕組みによって繰り返し利用してもらえることにつながるのです。
②冷凍、③宅配
冷凍であることは、コスト上圧倒的に有利です。冷凍食品をイメージしてもらうと分かりやすいと思いますが、冷凍すると長持ちするので廃棄が減り、原価が安くなります。また継続利用が多く、(ファンデリー社は委託先での製造ですが)工場の稼働率が安定し原価が下がります。そして最低7食分をまとめて宅配するので、運賃も抑えることが可能です。
このように、商品提供価格の低減につながるコスト削減をしている一方、圧倒的なネットワークの構築と栄養士によるサポートに手間をかける、メリハリの利いた経営をしているのです。そしてそれが全て「繋がっている」というのがこの会社のすごい所です。「弁当業界だから」「小売だから」といった常識にとらわれず、企業理念である「一人でも多くのお客様に健康で楽しい食生活を提案し豊かな未来社会に貢献」することに向けて、徹底的にビジネスモデルを磨き上げているのです。
2.集客にはコストがかかる?
弁当に限らず、小売りで避けて通れないのが販促コストです。ところが、この部分でもこの会社の驚くべき特徴があります。集客にコストがかからない体制を築いているのです。
前述の医療機関のネットワーク構築ですが、具体的には「カタログ」を使っています。このカタログは、①コンテンツ、②広告、③商品、という3つから成り立っています。
①コンテンツ
③商品は、自社商品の紹介ですので当然ですが、①コンテンツについては、このカタログ自体が医療機関の診療の現場で使えるものになるように作られています。医療機関では栄養指導という、食生活改善を目的として管理栄養士と相談する機会がありますが、予算が限られているので診療の為のコンテンツを作るのにコストを掛けられない医療機関が多いようです。ファンデリー社が診療の現場で使えるカタログを用意することで、医療機関にもメリットがあるので、タダで置いてもらえるのです。
②広告
広告については、医療機関に置いてもらえる媒体という強みを活かし、健康に関心の高い層にアクセスしたい食品メーカーや飲料メーカーから広告料収入が得られます。
つまり、食品・飲料メーカーや医療機関とWIN-WIN-WINの体制を築くことで、食品・飲料メーカーからお金をもらって、医療機関にタダで置いてもらえる仕組みを構築しているのです。
執筆者:事業イノベーション支援部 内田洋平
執筆: B-search