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1.はじめに
今回ご紹介するのは、企業戦略の一環として用いられるVRIO(ブリオ)分析です。これは、自社の競争優位性を確保するために、内部環境を分析するための4つの視点を提唱しています。VRIO分析は、商品の開発やマーケティングというよりも、経営戦略の策定において活用されるものです。
2.VRIO分析とは
新規事業に付き物の「不確実性」は、どれだけ入念に準備をしても完全に無くすことは困難です。そのため、自社の内部環境について客観的に把握することが重要です。これにより、自社の強みや弱みが明確になり、競争優位性のある戦略を立てやすくなります。経営において情報や必要な要素を適切に把握し、どのような方法で事業を行うべきかを明確にすることが、成功への鍵となります。
3. VRIO分析の4つの視点
VRIOは4つの言葉の頭文字から成り立っています
Value:経済的な価値
Rareness:希少性
Imitability:模倣困難性
Organization:組織
4つの質問に順番に答えることで、事業が競争優位性を得ているかを確認していきます。
左上の事業の経済価値から順に、現在の事業がイエスかノーかで答えていきます。
全てイエスであれば、持続的な競争優位があると確認することができます。
それぞれの項目を確認していきたいと思います。
3.1 Value(価値)
経済的な価値とは、リソースが十分にあるかどうかを評価する部分です。ここで言うリソースとは、資金的なリソースだけでなく、不動産や機器類などすべての資源を指しています。これらのリソースが十分にあるかどうかによって、企業が困難な状況に陥った際に損害を最小限に抑えられるか、または機会を最大限に活かせるかが決まります。この点が不十分な場合、他社に対する競争力が欠けることになります。
3.2 Rareness(希少性)
希少性とは、業界や市場においてそのビジネスがどれほど希少であるかを評価する項目です。自社や自社が提供している商品やサービスが市場においてどれほどの希少性を持っているか、競合他社と比較してどの程度の価値を持っているかを分析します。同じような商品や価値を提供している競合が多い場合、競争力が低下する可能性があります。
3.3 Imitability(模倣困難性)
模倣困難性とは、そのビジネスを他社がどれだけ模倣しにくいかを評価する項目です。業界において自社のビジネスモデルが模倣されにくいものであるかどうかを確認します。例えば、技術的な優位性や特許、ブランド力などが模倣を困難にする要素となります。これが不足している場合、一時的な競争優位にとどまり、長期的には競争均衡に戻ってしまうリスクがあります。
3.4 Organization(組織)
組織の力とは、経営資源やビジネスモデルを支える組織力を指します。優れたビジネスモデルや資源があっても、それを実現するための組織力がなければ持続的な競争優位は達成できません。組織力とは、リーダーシップ、企業文化、社員のスキルやモチベーションなどを含みます。
4. VRIO分析の判断基準
4.1 Value(価値)
判断基準: リソースや能力が企業にとって価値があるかどうかを評価します。
YES
リソースや能力が市場の機会を捉え、脅威に対抗するのに役立つ。
収益を増加させ、コストを削減し、顧客にとって価値を提供する。
NO
リソースや能力が市場の機会を捉えられず、脅威に対抗できない。
収益の増加やコスト削減に寄与しない。
4.2 Rarity(希少性)
判断基準: リソースや能力がどれだけ希少であるかを評価します。
YES
リソースや能力が競合他社に広く所有されていない。
そのリソースや能力を持つ競合他社が少ない。
NO
リソースや能力が多くの競合他社にも存在する。
そのリソースや能力を持つ競合他社が多数存在する。
4.3 Imitability(模倣困難性)
判断基準: リソースや能力が模倣されにくいかどうかを評価します。
YES
リソースや能力を模倣するのに高いコストや長い時間がかかる。
高度な技術や専門知識が必要で、再現が困難。
NO
リソースや能力を模倣するのが容易で、コストや時間がそれほどかからない。
他社が簡単に再現できる。
4.4 Organization(組織活用)
判断基準: リソースや能力が効果的に組織内で活用されているかどうかを評価します。
YES
リソースや能力が企業の戦略に組み込まれ、最大限に活用されている。
企業の構造や管理体制がリソースや能力を効果的に支援している。
NO
リソースや能力が企業の戦略に十分に組み込まれていない。
企業の構造や管理体制がリソースや能力を十分に支援していない。
5. VRIO分析の活用シーン
VRIO分析は、企業の内部環境を評価し、競争優位性を確立するための重要なツールです。このフレームワークは、企業のリソースや能力が持続可能な競争優位を提供するかどうかを評価するために使用されます。以下に、VRIO分析が有効に活用される具体的なシーンを紹介します。
5.1 新規事業の立ち上げ
新規事業を立ち上げる際に、企業は自身のリソースと能力が新市場で競争力を持つかどうかを評価する必要があります。VRIO分析を用いることで、企業の持つ特定のリソースや能力が価値を持ち、希少であり、模倣困難であり、組織的に活用できるかどうかを判断できます。
5.2 競争戦略の策定
競争戦略を策定する際、企業は自身の強みを明確にし、それをどのように市場で活かすかを考える必要があります。VRIO分析を通じて、企業の持つリソースや能力が競争優位性を持つかどうかを確認し、それに基づいて戦略を立てることができます。
5.3 企業買収や統合の評価
企業買収や統合を検討する際、買収対象企業のリソースや能力が自社にとってどれだけ価値があるかを評価することが重要です。VRIO分析を使用することで、対象企業のリソースや能力が競争優位をもたらすかどうかを見極めることができます。
5.4 内部資源の再評価
企業は定期的に自身の内部資源を再評価し、それが依然として競争優位をもたらすかどうかを確認する必要があります。VRIO分析を用いることで、企業は自身のリソースや能力が市場でどのように位置づけられているかを再評価し、必要に応じて戦略を修正することができます。
5.5 新製品やサービスの開発
新製品やサービスを開発する際、企業はそれが市場で成功するために必要なリソースや能力を持っているかを評価する必要があります。VRIO分析を通じて、新製品やサービスが競争優位性を持つかどうかを確認し、その開発を進めるべきかどうかを判断できます。
6. VRIO分析の実施方法
VRIO分析を実施する際には、各項目について具体的なデータや事例を収集し、詳細なレポートを作成することが重要です。これにより、経営判断を下す際の重要な資料となります。例えば、経済的な価値を評価する際には、現在の財務状況や資源の一覧を作成し、必要なリソースが十分にあるかを確認します。同様に、希少性を評価する際には、市場調査を行い、競合他社の状況を把握することが求められます。
また、模倣困難性を評価する際には、特許や技術の保有状況を確認し、他社が簡単に模倣できない独自の強みを持っているかを評価します。さらに、組織の力を評価する際には、社員のスキルやモチベーション、企業文化などを考慮に入れ、組織全体が持続的な競争優位を実現できる体制を整えているかを確認します。
VRIO分析を定期的に実施することで、企業の内部環境を常に把握し、変化する市場や競争環境に迅速に対応できるようになります。これにより、企業の競争優位性を持続的に保ち、長期的な成功を実現するための基盤を築くことができます。
7. VRIO分析のメリットと事例
7.1 VRIO分析のメリット
VRIO分析には多くのメリットがあります。まず、自社の強みと弱みを明確にすることで、競争優位性を持つ戦略を立てるための基盤が整います。これにより、資源を最大限に活用し、企業の成長を促進することができます。また、VRIO分析を定期的に実施することで、変化する市場環境や競争状況に迅速に対応するための柔軟性が向上します。
さらに、VRIO分析は組織全体の協力を促進し、共通の目標に向かって全員が一丸となることで、組織力を強化します。これにより、企業文化の向上や社員のモチベーション向上にも寄与します。
7.2 VRIO分析の事例
事例1: 大手IT企業A社
大手IT企業A社は、VRIO分析を活用して新たな市場に進出しました。同社は、自社の強みである高度な技術力(Value)と特許(Rareness)を基盤に、新規事業を展開しました。この事業は、他社が模倣困難(Imitability)な独自技術を活かし、強力なリーダーシップと優れた企業文化(Organization)に支えられ、短期間で市場シェアを獲得しました。
事例2: 製造業B社
製造業B社は、既存事業の見直しを行うためにVRIO分析を実施しました。分析の結果、自社の製品が市場で希少性が低く(Rareness)、競争力が低下していることが判明しました。そこで、同社は新たな製品開発に投資し、特許取得や技術力向上を図ることで、模倣困難性(Imitability)を高めました。この戦略により、B社は競争力を回復し、市場での地位を強化しました。
8. まとめと今後の活用
経営において重要なのは、情報を適切に収集し、それに基づいて戦略を策定することです。VRIO分析は、そのための強力なツールであり、自社の強みと弱みを明確にし、競争優位性を持つ戦略を策定するための基盤となります。経営者や戦略担当者は、この分析手法を習得し、定期的に実施することで、企業の持続的な成長を実現していくことが重要です。
VRIO分析を通じて、経営資源や組織力を最大限に活用し、競争優位性を持つ戦略を策定することで、企業は市場での地位を確立し、持続的な成長を実現することができます。経営における成功は、一朝一夕には実現しませんが、VRIO分析を活用することで、長期的な視点で戦略を策定し、持続的な競争優位を実現するための道筋を明確にすることができます。
以上のように、VRIO分析は企業戦略の策定や改善において非常に重要なツールです。経営者や戦略担当者は、この分析手法を積極的に活用し、自社の競争優位性を常に把握し、持続的な成長を実現するための戦略を策定していくことが求められます。これにより、企業は長期的な成功を実現し、持続的な競争優位を保つことができます。
9. 船井総研の新規事業開発支援コンサルティングの特徴
①新規事業専門のコンサルタントが直接サポート
単なる案の作成にとどまらない、事業立ち上げを経験しているからこその厳しい視点から事業案を評価し、ブラッシュアップしていきます。
事業案に応じて、弊社業種別コンサルタントの知見も導入します。
②自社の強みを活かした事業案の立案
自社の強みについての認識を各部署から集約し、多数の企業をご支援させて頂いている弊社コンサルタントの外部の視点も加えて、自社の強みを特定します。
③会社トップ層に刺激を与え、新しいことを考え続ける組織能力を獲得
各自が事業を自分で完成させるため、様々な未知の領域の情報を収集し、足を使って現場に行って調査する経験を積んで頂くことで、新しいことを考える癖付けができます。
船井総研の新規事業開発コンサルティングサービスは、新規事業開発の進め方・勝てる戦略・計画の立案から事業案探し、評価、立ち上げ、展開に至るまで、幅広いサポートをご提供します。
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執筆: B-search