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新規事業コラム
2022.03.01

事業再構築補助金で必要な事業計画書の作り方と加点項目について(後編)

本コラムでは、コロナで影響を受けた企業に対して、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など思い切った事業再構築を支援するために立ち上げられた事業再構築補助金について解説しています。
※本コラムでは、公募要領をかみ砕いた形で解説しています。詳細は、経産省HP掲載の各回の公募要領を確認してください。

中編はこちら>>

最後に、事業計画書の評価における加点項目を解説していきます。

■加点項目となるもの

公募要領には明確に、加点項目が記載されています。
言い換えれば、評価担当者はその項目やキーワードを注意してみているということですから、同じ内容だとしてもできる限りそのキーワードを盛り込んだ事業計画にしたほうが、評価が高くなる可能性がありということになります。

①事業化点

・体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

つまり、今回の事業には、どれほどのヒト・モノ・カネ・アビリティが必要であるか。
現在の自社にはその必要分のどれだけが既にあるのか。
不足分はどのようにして補填できるのか、その方法は現実的なのか。
この部分がきちんと伝わるかどうかが評価項目になっているということになります。

社内体制を組織図化・担当者名や役割を表の一覧にすると視覚的にわかりやいでしょう。また、その担当者の業務経験や資格も記載できるとよいかと思います。例えば、チームの責任者は社内でのほかの新規事業立ち上げ経験があり、本事業の業界専門の外部アドバイザーとパートナーを結んだ、などが書けると説得力がたかまります。

財務状況は、本事業のためにお金面での心配はないといえることが重要です。
ここで業績が好調である、という趣旨のアピールはできませんから(売上減少要件があるため)融資を受ける金融機関やその金額などを具体的に記載できると望ましいです。

・事業化において市場ニーズを考慮し(競合他社の動向把握など)、ユーザーやマーケット及び市場規模が明確か。その市場ニーズは検証できているか。

市場環境の分析に妥当性があるのかどうかが問われています。
市場規模やニーズを、データの出典もしくは調査方法などを記載しながら、数値やグラフで具体的に記載できることが望ましいです。
例えば、参入する〇〇市場は、市場規模が〇〇億円で、ユーザーは〇〇万人。自社商圏におけるユーザーは〇〇万人で、競合他社は〇社のみのため、新規参入して成功する確率は高い、といったイメージです。

・補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの
遂行方法及びスケジュールが妥当か。補助事業の課題が明確になっており、その課題の解
決方法が明確かつ妥当か。

商品やサービス、ビジネスモデルが競争力をもっているか、それによって収益は上げられるのかが問われています。
自社の商品が他社と比べてどう優れているのか、差別化できているのかを記載の上で、その価格設定の妥当性を記載していきましょう。

また、遂行方法とスケジュールの妥当性も聞かれていますので、誰が・いつ・どうやって各業務を遂行するのかというスケジュールを時系列に沿って記載するとわかりやすいかと思います。

事業の課題とその解決策においては、例えば新規事業にあたってデジタル化が必須であるが現在はその状態にない場合、全体のどの部分にデジタル化が必要なのか、そのためにこんなシステムを導入する、もしくは詳しい人材を雇い入れる、といったことが課題と解決策になるかもしれません。

・補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規
模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハ
ウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果
的な取組となっているか。

前提として、「事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上の増加」を満たすことが申請の要件のため、これは最低限満たす計画であるうえで、その増加率が高いと費用対効果が高いと示すことができます。

また、自社の強みや既存事業とのシナジーをどう生かせるかを具体的に記載できると加点ポイントとなります。例えば、既存の顧客を新規事業へ誘導できる、既存事業のノウハウの一部が転用できる、などです。

②再構築点
・事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。
大胆でリスクの高い思い切った取り組みであるかどうか、ポイントであることが明記されています。売上構成比の10%要件にもあるように、小規模な取り組みではなく既存売上の1割を超えるような大きな取り組みが評価されやすいといえます。
・既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。
コロナによる売上減少要件を満たしていることは最低限ですが、その影響が深刻であり、かつこの補助事業に取り組みことが急務であること、その理由を丁寧に説明してください。
・市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか。
市場ニーズや自社の強みという部分は、SWOT分析で自社の強み弱みを分析することが当てはまります。
選択と集中という言葉にあるように、どの部分に集中して投資を行うのか、反対に戦略的に撤退する分野など、既存事業も併せてリソース最適化できていることを記載していきます。
・先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か。
補助事業のビジネスモデルと、そこで活用するデジタル技術があればそれを記載していきます。新規事業が地域にとって何かしらポジティブな影響をあたえることを示せることが望ましいといえます。地域の企業から仕入れをおこなったり、店舗が地域の憩いの場になったりなど、細かなことでも構いませんので地域貢献の視点でいくつかメリットを上げていきましょう。

③政策点
・先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。
デジタル技術活用、カーボンニュートラルは経産省として推し進めているものです。特に低炭素技術は業種によっては記載することが難しい場合もあるかと思いますが、仕入れ先など少しでも関りが見つけられれば記載できるとよいです。
・新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。
こちらは、上ででてきた投資の選択と集中の点や、ビジネスモデルそのものの部分と重なるとも言えます。審査員の印象として、この計画であれば売上回復しそうだと思わせる納得感が重要といえます。
・ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
差別化、収益性、国際性など、何かしら記載できる要素があるかどうか検討してみましょう。国内だけでなく国際的な分野の流れを汲み取り海外ニーズにも合っていること、将来的に海外展開も検討の可能性がある場合はきしできるとよいかとおもいます。

・地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。
こちらも、上の地域のイノベーション貢献と重なる部分があります。地域企業との取引が生まれる、雇用を生む、場やイベントなどの機会を提供することがあれば記載してください。また例えば、災害の際に地域住民の助けとなる備えがあれば記載してください。
・異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。
共通プラットフォームや共同体という言葉にあるように、産官学連携などが示せると望ましい項目です。大規模なプラットフォーム活用の提示が難しい場合も、自社だけでなくほかの事業者と連携している部分などがあれば、その点をきちんと記載しアピールしていきましょう。


執筆: B-search

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