■どんなモデルか
出版事業とは、どのようなビジネスモデルでしょうか。
①三位一体のビジネスモデル
「出版社」「取次業者」「書店」、これらが三位一体となって出版事業を形成してきました。出版社が制作した書籍を取次業者が書店に流し顧客に販売する形式です。
書店は書籍を代理販売しているだけなので、売れ残っても取次業者に返品すれば損害が出ません。取次業者に一旦返品された書籍は、追加注文があれば再度書店に配送されますから、出版社は売れ残りのダメージを最小限に食い止められます。これら一連の流通は取次業者によって仲介されますから、取次業者が存在しなければ出版事業は回りません。
「出版社‐取次業者‐書店」の間には、強い相互依存関係が存在するのです。
②二つの独特な流通システム
日本の出版事業は、二つの独特な流通システムにより保護されています。「委託販売制度」と「再販売価格維持制度」です。
「委託販売制度」とは、①で紹介したシステム(「出版社‐取次業者‐書店」による三位一体)そのものと言えます。
「再販売価格維持制度」とは、出版社が設定した価格以外での販売を禁じるシステムです。言い換えれば、書店は出版社の言い値以外で書籍を販売できません。
いずれの制度も、活字文化の促進や各事業者の利益保護をその目的としています。
③伸び悩む電子出版、台頭するフリマアプリ
「委託販売制度と再販売価格維持制度が業態の硬直化を招き、イノベーションが生まれにくい要因になっている」と指摘されて久しい業界です。出版事業の新たな試みとして注目を集めた、電子出版事業は規模の微増傾向が続きますが、出版事業全体を支えるほどには成長していません(※1)。
そんな中、フリマアプリの台頭が顕著です。代表的なフリマアプリには、「ヤフオク」「メルカリ」「ラクマ」などが挙げられるでしょう。フリマアプリで販売される書籍は、たとえ新書であっても「中古本」扱いになります。中古本には再販売価格維持制度が適用されないため、自由な価格設定が可能になる点が台頭の理由です。
※1.参照元:Unistyle「【業界研究】出版業界の2020年の市場規模と現状を徹底解説!」
https://unistyleinc.com/techniques/1360
■業界動向やトレンドについて
出版事業は就活生の希望職種でも、上位にランキングされる紙媒体の王道ですが、近年市場規模の縮小傾向が続きます。出版販売額は2000年には約2.5兆円ありましたが、2020年には約2兆円まで落ち込みました(※2)。
「活字離れの進行」「趣味嗜好の多様化」「業態システムの硬直化」などが主な原因です。
縮小傾向が続く出版事業界にあってフリマアプリの躍進が続くのも、顧客にとって新書の価格破壊には大きな魅力があることを示唆しています。
オンラインメディアの有料記事化に活路を見出そうとする出版事業者も多々ありますが、その試みは概ね成功していません。顧客にとってインターネット上の記事や読み物は、無料であるという認識が未だ根強いことが、その原因として指摘されます。
※2.参照元:出版科学研究所「日本の出版販売額」
https://shuppankagaku.com/statistics/japan/
■出版事業がおすすめの方
出版事業のビジネスモデルがおすすめの方は、以下の通りです。
・フリマアプリの代行業務に明るい方
・古本事業者
・ECサイトを運営している方
フリマアプリの躍進は、当面続くと予想されます。フリマへの出品代行業務に詳しい方や、豊富な在庫を抱える古本事業者、ECサイトのノウハウを知る運営者にはおすすめです。
■成功のポイントは?
最後に、出版事業のビジネスモデルの成功ポイントを押さえておきます。
①フリマアプリにおける新書流通システムの構築
フリマアプリ内では、新書を古書として扱うことが可能です。一般の書店には不可能なビジネスモデルなので、新書をいかにして安定的に在庫化するかがポイントになります。
②自社ECサイトとフリマアプリとのシステム連携
自社ECサイト内にフリマアプリとシステム連携できれば、他社に対して優位性が確保できる上に、コストカットも期待できるでしょう。
③流通コストのゼロ化
伸び悩んでいるとはいえ電子出版にも一定の需要があり、今後イノベーションが起こる可能性もあります。電子出版のみに標準を合わせて、流通コストをゼロにするのも効果的です。