■どんなモデルか
質屋とは、どのようなビジネスモデルでしょうか。
①物品を通して顧客にお金を貸し付けるビジネス
質屋営業法(通称:質屋法)によると、「物品(有価証券を含む)を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業」と規定されています(原文ママ)。
貸金業の一種なので、商品を買い取るリサイクルショップとは根本的に業態が異なります。
愛着のある品物を完全に手放すのは気が引けるものですが、この顧客心理にこそ質屋のニーズはあるでしょう。
②目利きがモノを言う世界
商品に対しての目利きがモノを言う世界です。
物品の真贋や価値を正確に判定する、鑑定眼がなければビジネスが成り立ちません。社会情勢やトレンドを元に、物品の価値がどのように変化するか予測する能力も欠かせません。鑑定士としての極めて高度な知識と経験が必要になります。
③起業のハードルが高い
起業に際しての手続きがやや煩雑で、最低限取得すべき資格もあります。
管轄する都道府県公安委員会の認可(質屋営業許可)が必要になりますが、質蔵や保管設備が整備されていなければ認可が下りません。許可申請には、「3年以内に罰金刑を受けていないこと」などの条件もあります。さらに所轄する税務署への手続きが必要になり、営業全般に関する3年間の帳簿の保存義務も生じます。
質屋営業許可に加えて、古物商や宝石鑑別資格も最低限必要なので、起業のハードルが他の職種に比べて高いと言えるでしょう。
■業界動向やトレンドについて
質屋業界そのものの市場規模は縮小しています。2016年にDIAMOND社が発表したデータによれば、1950年代に約2万件あった質屋は、2015年には3,034件まで減少しています(※1)。
しかし近年では、リユースの観点から再注目を浴びており、2016年に経済産業省が実施した調査によれば、以下の通り骨董品小売業や中古品小売業の売り上げは伸びています(※2)。
骨董品小売業 | 中古品小売業(骨董品除く) | |
年間販売額 | 613億円(前々年比+11.2%) | 4,490億円(前々年比+58.9%) |
事業所数 | 1,900所(前々年比+11.9%) | 5,627所(前々年比+49.2%) |
高度な専門性が要求されるので開業にあたっての敷居が高く、個人事業主として質屋を開業する経営者は激減しました。質屋経営のノウハウを習得するため、フランチャイズに加盟するのが近年のトレンドです。
※1.参照元:DIAMOMD ONLINE「消えゆく質屋、4割が商売自体を「知らない」」
https://diamond.jp/articles/-/112018
※2.引用元:環境省「平成 30 年度リユース市場規模調査報告書」
https://www.env.go.jp/recycle/H30_reuse_research_report_1.pdf
■質屋がおすすめの方
質屋のビジネスモデルがおすすめの方は、以下の通りです。
・鑑定眼のある方
・トレンド予測ができる方
・開業資金に余裕がある方
物品の目利きやトレンド予測に長けている方におすすめです。一時的に顧客へお金を貸し付けるための初期資本も必要なので、開業資金に余裕がある方にもおすすめです。
■成功のポイントは?
最後に、質屋のビジネスモデルの成功ポイントを押さえておきます。
①鑑定士としての腕を磨く
鑑定士としての知識と経験が、ビジネスの行方を大きく左右します。質屋で成功するための最重要ポイントです。
②リユースの潮流に乗る
現在リユースは世界的な潮流ですが、この概念はそもそも質屋と親和性が高く、格好のビジネスチャンスとなりうるでしょう。
③明るい店づくり
年配や女性の方を中心に、質屋には昔ながらの暗い雰囲気がイメージとして残ります。こういった方がブランド品を預けに来やすい、明るい雰囲気の店づくりが必要です。