■立ち食い寿司のビジネスモデル
1.伝統的な立ち寿司
本来伝統的な江戸前寿司は、立ち寿司から始まったものです。小規模な店舗スペースに職人が立ち顧客に提供するスタイルで、回転率の高いビジネスモデルです。一般的には繁華街やビジネス街など、人の集まりやすい立地で営業することが多く、個人経営の店も少なくありません。
2.ファーストフード型
低価格を売りにし、若い世代をターゲット層とするビジネスモデルです。一人でも気軽に立ち寄れ、仕事の合間の昼食などにも利用されます。ファーストフード型はフランチャイズ店が多く、メニューや経営方式もマニュアル化されている場合が多いです。フランチャイズ型のメリットとしては、飲食業界に経験がないオーナーでも参入の敷居が低いという点があります。
■立ち食い寿司の取り巻く現状
1.コロナ禍以降はファーストフード型が強い
一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」の2019年12月〜2020年7月調査によると、コロナ禍で大きな打撃を受けた外食業界の中でもファーストフードは比較的影響が小さく、緊急事態宣言解除後は早い回復を見せています。ファーストフードの売上前年比高は、2020年4月に80%近くまで落ちましたが、7月には96%まで回復を見せています。一方で、ディナーレストランは20%以下まで落ち込み、7月にも66%の回復に留まっています。寿司業界においてもコロナ禍後は、ゆっくり滞在する形の店舗よりも早く手軽に食べられる店舗スタイルが好まれると予想されます。
2.伝統型は外国人に人気
観光地にある伝統的な立ち食い寿司店は、外国人に人気を集めています。例えば、近年では中国観光客の「爆買い旅行」が話題になりましたが、その後は富裕層を中心に物ではなく現地体験を求める旅行が好まれるように変化しています。利用客はそうした穴場体験をSNSで発信し、それを見た他の観光客をさらに集める流れとなります。現在はコロナ禍で日本に来る外国人は激減していますが、回復後は同様の流れがあると見込まれます。
3.高級店系列も立ち食い型に参入
2021年7月にはミシュランでビブグルマンの認証となったあきら築地店が立ち食い寿司店をオープンしました。また、「鮨 銀座おのでら」、「根室花まる」などの高級店系列も立ち食い寿司店をオープンしており、どの店も盛況となっています。高級店の味を安く手軽に味わえることが人気の秘訣です。
■おすすめの方
立ち食い寿司がおすすめの方は、以下の通りです。
・自身が寿司職人である
・コロナ禍にも強い飲食店経営がしたい
・良いネタの仕入れ先につながりがある
上記のような方々は、手軽でありながら高品質な提供が求められる立ち食い寿司の経営を成功できるため、おすすめのビジネスモデルです。
■成功のポイント
1.腕のある職人確保が鍵
小規模なテナントと簡単な設備でどこでも始められる立ち食い寿司ですが、一番重要なのはネタの良さと職人の腕です。オーナー自身が寿司職人でない場合は、職人の確保が一番の難関となるでしょう。立ち食い寿司のファーストフード店のようなコンセプトを生かし、パートタイムの職人を複数雇うという形式を取る方法もあります。例えば、すでに引退している経験方法な職人を週1、2日だけ雇うといった方式です。この方式は、腕の確かな職人を確保できるとともにフレキシブルな雇用体系ができ、人手不足を解消できるメリットがあります。
2.テイクアウトやデリバリーで客単価を上げる
立ち食い寿司は、価格設定を安くする代わりに回転率と客単価を上げることによって利益率を高めることができます。そこで、テイクアウトやデリバリーも取り入れると、客単価を上げる効果があります。持ち帰り用のメニューを積極的に提案すれば、店先で少しだけ食べ家に持ち帰ってゆっくり食べたい人や、家族に持ち帰りたい人などのニーズに応えることができます。
参考:
https://www.kinzai.jp/wp-content/uploads/2020/09/14zifollowup08.pdf