■日本酒専門店のビジネスモデル
1.酒蔵兼販売店
製造を行う酒蔵が、同時に販売も行うビジネスモデルです。この場合には、酒卸店への販売と店舗販売が主な利益となります。製造のための設備に費用がかかるため、効率よく製造量を増やすことや回転率が重要です。酒蔵の工場見学などを実施し、ブランド認知を高める努力をしているメーカーもあります。
2.酒卸店
酒蔵から購入した日本酒を店舗販売するビジネスモデルです。オーナー自らセレクトしたこだわりの日本酒を取り揃える店が多く、産地や品種の知識、また酒蔵との繋がりが求められます。パッケージを見るだけではなく、味わってもらいファンを増やすため、バーや居酒屋を併設した形式をとっている店舗もあります。
3.海外輸出
最近では日本酒のEC販売も活発ですが、中でも海外輸出には著しい増加が見られます。地方の小さな酒蔵で作られた日本酒でも、インターネットを活用し効果的なマーケティング戦略を行えば、世界に知られるブランドに成長することができます。海外進出は、代理店を通して海外での現地営業を行ったり、日本物産展へ参加したりするなどの方法があります。
■日本酒専門店の取り巻く現状
1.国内市場規模は減少を続ける
国税庁の「清酒製造業の概要」調べによると、日本酒産業のメーカー市場規模は年間4,350億円です。5,505億円の靴産業と近いだけの需要がある状況です。一方ビール産業は年間3兆2,822億円の売上があり、日本酒の約7倍の需要が見られています。
2.日本酒の消費量はピークの3分の1
国税庁「酒のしおり」によると日本酒の課税数量は1973年の177万klをピークに下降を続けています。令和元年の清酒出荷量は50万klを割り込み、46klとなっています。日本酒の中でも分類を分けて見てみると、普通酒は減少傾向にありますが、純米酒及び純米吟醸酒については、平成20年度の8.2万KLから令和元年には10.1万KLと23.2%の増加があります。このことから、日本酒全体の消費量は減少しているものの、より高付加価値のある商品のニーズは高まっていることがわかります。
3.海外への輸出は増加
国内での日本酒売上は減少している中、海外輸出は9年連続で増加しています。国税庁「酒のしおり」によると2009年の輸出金額は72億円でしたが、2018年には222億になり、3倍の成長を見せています。輸出量は2倍の増加ですが、金額は3倍になっていることから、海外輸出においても高級志向な日本酒ブランドが好まれていることが見て取れます。
■おすすめの方
日本酒専門店がおすすめの方は、以下の通りです。
・日本酒の知識がある
・酒蔵と関係が深い
・海外進出の目標がある
上記のような方々は、ブランドプロデュース力と海外進出が鍵の日本酒専門店経営を成功できるため、おすすめのビジネスモデルです。
■成功のポイント
1.海外にアピールするブランド作り
現在の日本酒業界において、海外進出は成功に欠かせないポイントの1つです。海外では酒の種類が細分化されています。また、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された影響もあって、海外ではプレミアムな日本酒が人気です。そのため、産地や原料、製造方法などをわかりやすく紹介し、ブランド独自の個性をアピールするブランドプロデュースが欠かせません。海外でブランドプロデュースに成功し、人気を集めることができれば、その後日本国内でも再注目されるきっかけとなり、国内外での売上向上に期待ができるでしょう。
2.国内販売でも新規開拓の継続が必要
日本酒には長い伝統があり、それは商品のアピールポイントとなる点でもあります。酒蔵には老舗が多く、100年企業や200年企業も多く存在しています。しかし、伝統に対する意識が変化を拒んでしまっており、国内の新規顧客の獲得を阻んでいる局面もあります。そこで、伝統を守りつつも新規顧客のニーズに沿った営業を行っていくことが欠かせません。若い世代に合った日本酒の商品開発や改良、SNSを利用した宣伝など、時代の流れに沿った販売方法を開拓していく必要があります。
参考:
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seishu/2018/pdf/all.pdf
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2021/pdf/000.pdf