新規事業開発において、顧客の声を事業に反映させるのが重要であることは、言うまでもないことだと思います。ではどのような顧客ヒアリングをすることが有効でしょうか?本コラムでは、過去の船井総研での知見を基に、具体的なポイントを解説させて頂きます。
Table of Contents
1. 顧客にイメージさせる
ヒアリングにおいて一番重要なのは、そのビジネスやサービスを、顧客候補となるインタビュイーがどこまで具体的に理解しイメージできるか?だと考えております。
一方で、特に検討の初期の段階では、具体化しようにも決まっていないことが多い、という状態であることが多いのが実態です。ただ、そのまま顧客候補に当ててしまうと、「なんとなく良さそう」くらいの漠然とした回答になってしまい、あまり顧客ヒアリングをした価値を出せなくなってしまいます。
そこで、船井総研として推奨しているのは、アプローチブックづくりです。実際にサービスローンチした際のサービス説明資料を、仮の内容が多くてもいったん作成してしまい、それを説明してヒアリングする、という方法です。
例えば、事業展開前には当然導入事例も無いはずですが、「こんな他社事例がここに乗りそう」という想定で書いてしまう、というものです。(もちろん、インタビュイーに対してこれらが本当の導入事例でないことをお伝えする必要はあります)価格や期間についても仮で設定し、それをベースにヒアリングすることをお勧めします。
このような情報が具体的になっているほど、受容性だけでなく改善ポイントも具体的に得ることができます。
2. 実態を把握する
ヒアリングでの一番の論点は、「このサービスを受容できますか?(受容できない場合のネックは何ですか?・より受容しやすくするためにはどう改善したら良いですか?)」です。とはいえ、その前に相手の実態についても把握する必要があります。例えば、事業の前提が間違っていたり、ターゲットとすべき企業が想定とズレているようなケースがあり、そうした情報を前もって検討段階から把握することは重要です。したがって、顧客へのヒアリングの中で相手の企業の実態についてもしっかり把握しておくべきです。
例えば、社員のスキルアップを目的とした研修サービスの場合、相手の会社にそれに対するニーズがあるかどうかは把握する必要があります。具体的には、仮説として、「顧客はこのスキルの育成がボトルネックになっていて、スキル人材さえいればビジネスはたくさんあって売上が伸ばせる」という前提があったとします。その場合、ヒアリングの中で、その仮説の妥当性は検証しておくべきです。例えば、実態をヒアリングしてみると、商圏内にはビジネス自体があまりなく、たとえスキル人材がいても売上は伸ばしようがない、という回答が得られた場合、事業評価そのものに関する(少なくともターゲットの見直しが必要になる)重要なインサイトが得られたことになります。
そのような実態把握をする上でも、ヒアリングをするインタビュアー自体がその業界に詳しいことも、重要なポイントになると考えております。
3. 定量データは別で確保する
基本的には、ヒアリングの目的は、定性情報を得ることに置くべきと考えます。現実的に、顧客ヒアリングを、統計的に優位なレベルで大量に実施することは難しいことが多いです。したがって、顧客ヒアリングでは質(深さ)にはこだわる一方、量については別の手段を検討する必要があります。
1つのやり方として、顧客ヒアリングの後にWEBアンケート調査を実施するというものがあります。ヒアリングではオープン質問も含めてできますが、アンケート調査では基本的には選択肢を用意した上での質問になります。したがって、ヒアリングの中で状況を把握した上で、多数の顧客に対して「同じような状況の人がどのくらいいるか?」を把握するためにWEBアンケート調査を実施することは、検証として有効です。
いかがでしたでしょうか?今回は、顧客へのヒアリングについて取り上げました。船井総研では、新規事業開発を行う企業様向けに、顧客へのヒアリングを含む事業性評価のご支援をさせて頂いております。貴社にて新規事業を検討されるにあたって、もしお困りごとや行き詰まりなどございましたら、ご相談だけでもぜひ一度お問い合わせ頂ければ、弊社コンサルタントが対応させて頂きます。
執筆: B-search