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新規事業コラム
2024.07.29

【2024年最新版】成功する新規事業立ち上げの全プロセスと参入軸の評価法を紹介:経営者向け完全ガイド

1. はじめに

成功する新規事業の立ち上げには、なぜそれが必要なのかという明確な意義とプロセス、そして適切な参入軸の評価が欠かせません。本記事では、新規事業を成功に導くための具体的な「型」として、市場分析やマーケティング戦略の構築、資金調達の方法、人材確保の重要性、リスク管理の手法、そしてESG(環境・社会・ガバナンス)の考慮といった、各プロセスにおける経済的な理由や意味を含めた詳細な解説を提供します。企業が持続的成長を実現するための必須ガイドとして、実践的な知識を提供します。

2. 【プロセス①】 会社の歴史から新規事業の意義・メリットと評価軸を見つける

新規事業を立ち上げる意義を見極めるためには、まず自社の歴史や成り立ち、これまでの成功と失敗の要因をしっかりと分析することが重要です。企業がこれまでどのように市場に参入し、成長してきたのかを理解することで、新たな事業を展開する際の指針が見えてきます。例えば、過去の成功事例に共通する要因を抽出し、それを新規事業にどう活かせるかを考察します。また、失敗事例からは、どのようなリスクが存在し、それをどのように回避するかを学びます。これにより、新規事業が自社の既存事業とどうシナジーを生み出し、全体の成長に貢献できるかを明確にすることができます。
新規事業を立ち上げることで得られるメリットには、社内の活性化や新たな人材の流入、そしてポストの創出などがあります。これにより、企業全体が活性化し、従業員のモチベーション向上や新たな市場での競争力強化が期待できます。また、新規事業で得た利益を既存事業に再投資することで、事業全体の持続的な成長を促進することが可能です。さらに、業界のトレンドに左右されない独自の成長ドライバーを獲得することで、企業の未来を切り開くことができます。
新規事業を行う判断軸としては、外部サポートの有無、少人数モデルの採用、定量的な目標達成の可能性、既存事業とのシナジー効果の有無が挙げられます。これらの軸を基に、自社に最適な新規事業を選定し、その成功確率を高めるための準備を行います。

3. 【プロセス②】 経営者(ご自身)の気質と新規事業をマッチングする

経営者が新規事業を立ち上げる際には、自身の気質や価値観と新規事業の方向性をマッチングさせることが成功の鍵となります。経営者のビジョンやリーダーシップスタイルが新規事業にどのように影響を与えるのかを慎重に検討し、それに基づいて事業の方向性を決定することが重要です。たとえば、経営者がリスクを積極的に取るタイプであれば、革新的で市場に大きなインパクトを与える事業を選ぶべきです。一方で、安定成長を重視する経営者であれば、既存事業とシナジーを生み出せるような事業を選定することが適切です。
このプロセスでは、経営者の強みや弱みを徹底的に分析し、それに基づいて新規事業を選定します。経営者が持つスキルや過去の経験を最大限に活かすことで、事業がスムーズに進行し、成功の可能性が高まります。また、経営者が情熱を持って取り組める事業を選ぶことで、モチベーションを維持し、難局を乗り越える力が養われます。さらに、経営者が新規事業に対してどれだけコミットできるか、そしてその事業にどれだけのリソースを投入する覚悟があるかを確認することも重要です。

4. 【プロセス③】 プロセス①・②の結果を基に、事業計画を策定する

プロセス①・②を経て得られた知見をもとに、具体的な事業計画を策定します。事業計画は、新規事業の成功を左右する重要な要素であり、詳細な市場分析と競合調査を通じて事業の方向性を明確にすることが求められます。事業計画には、ターゲット市場の選定、提供する製品やサービスの特徴、収益モデル、そして資金調達計画など、事業の成功に必要なすべての要素を含めます。
事業計画を策定する際には、まず市場の規模や成長性を見極め、競合他社がどのような戦略を取っているかを詳細に調査します。この情報を基に、自社が市場でどのようにポジショニングを取るべきかを決定し、競合優位性を確立するための戦略を策定します。さらに、事業のリスクを予測し、そのリスクに対する対応策を事前に計画しておくことが重要です。
資金調達計画も、事業計画の中で重要な要素です。必要な資金をどのように調達するか、その資金をどのように効果的に活用するかを詳細に計画します。さらに、人材確保や組織構築の計画も不可欠です。新規事業を成功に導くためには、適切な人材を確保し、効果的な組織体制を構築することが求められます。

5. 事業ドメインの選定とポジショニング戦略

新規事業を成功させるためには、事業ドメインの選定が極めて重要です。事業ドメインの選定とは、どの市場や産業で事業を展開するかを決定するプロセスであり、その選択が事業の成功を大きく左右します。市場調査を基に、成長が見込める分野や自社の強みを最大限に活かせる領域を選び、長期的に価値を提供できる事業を選定することが求められます。
事業ドメインの選定では、以下の点に注目します。

  • 市場の成長性: 市場の成長性や規模、トレンドを分析し、長期的に成長が期待できる分野を選定します。市場が成長する中で、自社がどのようにその成長を取り込むかを計画します。
  • 競合環境: 競合他社の状況や市場シェアを分析し、自社がどのように競争優位性を築くかを考察します。競合が少ないニッチな市場を狙うか、または競合が多い市場で差別化を図るかを決定します。
  • 自社の強みとの一致: 自社が持つ資産や技術、ブランド力を活かせる分野を選びます。自社の強みを最大限に活かし、市場でのポジショニングを確立することが重要です。

また、競合他社との差別化を図るためのポジショニング戦略も欠かせません。ポジショニングとは、顧客に対して自社の製品やサービスをどのように位置づけるかを決定するプロセスです。市場での独自のポジションを築くことで、顧客に対する認知度を高め、競争優位性を確立することができます。
ポジショニング戦略を立案する際には、以下の点を考慮します。

  • ターゲットセグメントの選定: 市場を細分化し、自社が最も効果的にアプローチできるセグメントを選定します。ターゲットセグメントのニーズに応じた製品やサービスを提供し、特定の顧客層に強く訴求します。
  • 差別化要素の明確化: 自社の製品やサービスが競合他社とどう異なるのかを明確にし、それを顧客に伝えるためのメッセージを策定します。品質、価格、サービス、イノベーションなど、何を軸に差別化を図るかを決定します。
  • ブランドポジショニング: 自社ブランドが顧客の心にどのように刻まれるかを考え、ブランドポジショニングを確立します。これにより、顧客に対して一貫したブランドイメージを提供し、信頼を築きます。

6.詳細な事業計画の策定方法

事業計画の策定には、多くの要素をバランスよく組み合わせる必要があります。まず、SWOT分析やPEST分析を用いて、自社の内部環境と外部環境を徹底的に分析します。SWOT分析では、企業の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を洗い出し、それに基づいて戦略を立案します。一方、PEST分析では、政治的要因(Political)、経済的要因(Economic)、社会的要因(Social)、技術的要因(Technological)の4つの観点から、外部環境が事業に与える影響を評価します。
具体的なマーケティング戦略を策定する際には、ターゲット市場や顧客ニーズに合わせた製品やサービスの開発が重要です。顧客のニーズを正確に把握し、それに応じた価値を提供することで、競合他社との差別化を図ります。また、ビジネスモデルキャンバスを活用して、収益構造やコスト構造を視覚的に整理し、事業の持続可能性を評価します。このように、詳細な事業計画を策定することで、新規事業の成功確率を大幅に高めることができます。
事業計画の策定過程では、以下のポイントにも注目します。

  • 市場分析: 市場の動向やトレンド、ターゲット市場のニーズを深く理解するための市場調査を行います。市場規模や成長性、競合の強みと弱みを明確にし、自社のポジショニングを決定します。
  • 事業コンセプト: 新規事業の核となるコンセプトを明確にし、それに基づいて具体的な商品やサービスの開発計画を立てます。事業コンセプトが顧客にどのような価値を提供するかを明確にすることが重要です。
  • マーケティング戦略: ターゲット市場に効果的にリーチするためのマーケティング戦略を策定します。広告、プロモーション、デジタルマーケティングなどの手法を駆使し、顧客にアプローチします。
  • 収益計画: 事業の収益性を予測し、収益モデルを構築します。売上予測、コスト管理、利益率の分析を行い、収益性を高めるための戦略を策定します。
  • リスク管理: 事業に伴うリスクを徹底的に分析し、それに対する対応策を策定します。リスク管理の体制を整え、予期しない事態に迅速に対応できるようにします。
  • 人材確保と組織構築: 事業に必要な人材を確保し、効果的な組織構築を行います。適材適所の配置を行い、チームビルディングを通じて組織全体のパフォーマンスを向上させます。

7. 市場分析と競合調査の重要性

市場分析と競合調査は、新規事業の成功に不可欠です。市場の動向やトレンドを把握し、ターゲット顧客のニーズを深く理解することが重要です。また、競合他社の状況を詳細に調査し、自社のポジショニングを明確にします。これにより、競合優位性を確立し、効果的なマーケティング戦略を展開することが可能です。
市場分析には、次のような手法を用います。

  • SWOT分析:自社の強み・弱み、機会・脅威を特定し、戦略策定に活かします。
  • PEST分析:政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の観点から外部環境を分析し、事業の方向性を検討します。
  • マーケットリサーチ:ターゲット市場のニーズや競合状況を把握するための市場調査を行います。調査結果をもとに、具体的なマーケティング戦略を策定します。

7-1クロスSWOT分析
クロスSWOT分析は、SWOT分析の結果を基にして戦略を具体化するための手法です。SWOT分析は企業の内部および外部環境を分析しますが、クロスSWOT分析ではその結果を組み合わせて戦略を立案します。SWOT分析は「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」を識別するのに対し、クロスSWOT分析はこれらの要素を掛け合わせて具体的な戦略を導き出します。

  • 強み(Strengths): 企業の内部的な優位性
  • 弱み(Weaknesses): 企業の内部的な欠点
  • 機会(Opportunities): 外部環境の有利な要素
  • 脅威(Threats): 外部環境の不利な要素

クロスSWOT分析の具体的な事例①
クロスSWOT分析の具体的な事例を紹介します。以下は世界中にカフェを展開しているS社の事例です。
強み: 強力なブランド力、豊富な商品ラインナップ 弱み: 高価格設定、依存する店舗運営モデル 機会: 健康志向商品の需要増加、新興市場への進出 脅威: 地元コーヒーショップの増加、原材料価格の変動
クロスSWOT分析を行うと、以下の戦略が導き出されます。

  • 強み(S)× 機会(O): 健康志向商品の開発とプロモーションの強化
  • 強み(S)× 脅威(T): 高価格帯商品の差別化を図り、競合との差別化
  • 弱み(W)× 機会(O): 店舗運営モデルを見直し、オンライン販売の拡充
  • 弱み(W)× 脅威(T): コスト管理の徹底と効率化

クロスSWOT分析に基づく戦略として、同社の強力なブランド力を活かし、健康志向商品の需要増加に対応するためにオーガニックや低カロリーの飲料や食品を新たに開発し、積極的にプロモーションを行います。また、地元コーヒーショップの増加という脅威に対しては、特別なコーヒー豆や限定商品の提供を拡大することで高価格帯商品の差別化を図り、競合との差別化を強化します。高価格設定という弱みを克服するために、新興市場への進出を見据えた店舗運営モデルの見直しと、デリバリーサービスやサブスクリプションモデルの導入によるオンライン販売の拡充を図ります。さらに、依存する店舗運営モデルの脆弱性を補うため、原材料価格の変動に対しては効率的なサプライチェーン管理とコスト削減策を講じ、収益性の確保とコスト管理の徹底を実施します。

クロスSWOT分析の具体的な事例②
世界的な大手物流会社A社の事例をご紹介します。
強み: 広範な物流ネットワーク、豊富な製品ラインナップ 弱み: 高い運営コスト、依存する物流インフラ 機会: オンラインショッピングの需要増加、新技術導入の機会 脅威: 競合の増加、規制の強化
クロス分析により、以下の戦略が有効であると考えられます。

  • 強み(S)× 機会(O): 新技術を導入し、物流効率のさらなる向上
  • 強み(S)× 脅威(T): 規制強化に対応するためのコンプライアンス強化
  • 弱み(W)× 機会(O): コスト削減のための自動化技術の導入
  • 弱み(W)× 脅威(T): 新しい物流モデルの開発と実装


クロスSWOT分析に基づく戦略として、同社の広範な物流ネットワークを活かし、オンラインショッピングの需要増加に対応するためにAIやロボティクスを活用して物流プロセスを自動化し、配送スピードと精度を向上させることで顧客満足度を高めます。また、豊富な製品ラインナップという強みを持つA社は、規制の強化に対応するためのコンプライアンス強化を実施し、データ保護や環境規制に対応する新しいポリシーを策定することで企業の信頼性を維持し、法的リスクを低減します。さらに、高い運営コストという弱みを克服するために、倉庫内の作業を自動化し、人件費を削減することで運営コストを抑え、効率的な運営を実現します。依存する物流インフラの脆弱性を補うためには、地域拠点の増設や第三者物流(3PL)との提携を強化し、より柔軟で迅速な配送システムを構築することで競合他社との差別化を図り、顧客満足度を向上させます。

7-2PEST分析とは
PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境をマクロな視点から分析するためのフレームワークのことを指します。PESTとは、
Politics(政治的要因) / Economy(経済的要因) / Society(社会的要因)/ Technology(技術的要因)
の4つの分析要素の頭文字をとったもので、事業計画やマーケティング戦略の策定、新規事業の立案の際に用いられ、自社を取り巻く環境を社会の動きなど大きな視野から分析するのに効果的です。

Politics(政治的要因)とは、自社のビジネスに関連した法律や条例の規制や緩和、国内外の政治動向などを意味します。政治的要因、特に法律などのルールの改正は企業にとっては逆うことのできない絶対的な要因となります。また、業界によっては国内のみならず、国際的な取り決めや世界の政治的潮流(例えば近年の環境問題への政治的意識の高まりなど)も重要な分析事項の1つとなります。
Economy(経済的要因)とは、景気の状態やGDP成長率、物価や為替、金利の変化などを意味します。ここでの経済的要因とは、自社が属する業界に限った話ではなく、日本全体や海外の経済動向といった広域的な意味で捉えて分析する必要があります。経済の動向が事業にとって、追い風か向かい風かによって事業の重点ポイントや製品・サービスの価格設定なども変わってきます。
Society(社会的要因)とは、人口動態や環境変化、流行やライフスタイルなど文化の変遷など、最も幅広い範囲を意味します。広域であるがゆえに非常に分析の難しい点である一方で、どんな社会的変化もすべての業界に影響を与えると言えるという観点においては、他要因分析よりも分析の深度は浅くても大丈夫です。社会的要因分析においては、基本的に「変化」に着目するようにしましょう。
Technology(技術的要因)とは、自社の事業に関係する新しい技術の進歩や完成、開発の中止や撤退、各社の研究開発費動向などを意味します。技術の進歩は製品やサービスなど消費者に見えるものだけではなく、生産工程技術や輸送技術など表には見えないものまで含めて分析することが重要です。近年は、技術が目まぐるしいスピードで発展を遂げているため、このスピード感に合わせた分析を意識しましょう。

PEST分析の目的は、自社にとっての社会的なチャンスとリスクを明確に把握することにあります。
ビジネスにおいて、自社の事業の成功可否は自社の持つ経営資源だけではなく、世の中の変化や潮流など自社ではコントロールのできないマクロな環境の変化に大きく影響を受けます。そのため、既存・新規問わず事業計画やマーケティング戦略を立案する際には、自社の事業に関わる可能性のある世の中の動きについて広域的に把握する必要があります。政治・経済・社会・技術の現状を分析し、変化を予測することで、自社の事業が今後迎え得るチャンスやリスクが明確になり、事業の推進や撤退を含めた意思決定につながります。
以下のような視点で検討・深掘りしていくと、PEST分析がしやすくなります。

実際の大手自動車メーカーA社のPEST分析事例をお見せします。

8. 資金調達の方法

新規事業を成功させるためには、必要な資金を確保することが不可欠です。資金調達の方法には、ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家、銀行融資、クラウドファンディング、政府の補助金や助成金など、多岐にわたる選択肢があります。それぞれの資金調達方法にはメリットとデメリットがあり、自社の状況や事業計画に最も適した方法を選定することが求められます。
資金調達の際に考慮すべきポイントは以下の通りです。

  • 資金調達の目的: 事業の立ち上げや成長のために、どの程度の資金が必要かを明確にし、その資金をどう使うかの計画を立てます。資金調達の目的を明確にすることで、投資家や金融機関に対して説得力のある説明が可能となります。
  • 資金調達手段の選定: 各資金調達手段の特性を理解し、事業に最適な方法を選定します。例えば、ベンチャーキャピタルは成長のための大規模な資金が必要な場合に有効ですが、株式の希釈が起こるリスクもあります。銀行融資は株式の希釈を避けられるものの、返済義務が生じます。
  • 返済計画とリスク管理: 資金を調達した後の返済計画を具体的に策定し、返済能力を評価します。また、調達資金の使い道や投資リスクを事前に分析し、リスク管理を徹底します。
  • 政府補助金や助成金の活用: 政府が提供する補助金や助成金を活用することで、資金調達のリスクを軽減できます。これらの資金は、通常、返済義務がないため、事業の初期段階で非常に有用です。申請書類の作成や必要な条件を満たすことが重要です。

9. 社内体制の整備とマネジメント

新規事業を成功に導くためには、社内体制の整備と組織のマネジメントが不可欠です。社内体制の整備とは、プロジェクトチームの編成、役割分担、リソースの割り当て、そしてプロジェクトの進捗管理を指します。これらの要素がしっかりと機能することで、プロジェクトが円滑に進行し、目標達成に向けたチーム全体のパフォーマンスが最大化されます。
社内体制を整備する際には、以下の点に注目します。

  • プロジェクトチームの編成: 新規事業の立ち上げには、適切な人材を集めたプロジェクトチームが必要です。各メンバーの役割を明確にし、チームが一丸となって目標に向かって進めるようにします。また、プロジェクトリーダーの選定も重要であり、リーダーシップを発揮できる人物を配置することで、チームの結束力を高めます。
  • リソースの配分と管理: 新規事業には限られたリソースをどのように配分するかが成功の鍵となります。資金や人材、時間などのリソースを効率的に管理し、最適な配分を行います。また、定期的なミーティングを通じて進捗状況を確認し、必要に応じてリソースの再配分を行います。
  • プロジェクトの進捗管理: プロジェクトの進行状況をモニタリングし、目標達成に向けた進捗を確認します。問題が発生した場合は、速やかに対応策を講じることで、プロジェクトの遅延や失敗を防ぎます。また、各メンバーが自分の役割を十分に理解し、責任を持って業務を遂行できるようにします。

9-1. 社内共有ツールの活用と情報の可視化
新規事業においては、社内での情報共有が円滑に行われることが成功の鍵となります。特に、複数の部門が連携してプロジェクトを進める場合、情報の可視化と共有が重要です。これを実現するために、社内共有ツールを活用し、プロジェクトの進捗や課題をリアルタイムで把握できる体制を整えます。
社内共有ツールの導入に際しては、以下の点を考慮します。

  • リアルタイムでの情報共有: チームメンバーがいつでもどこでも情報にアクセスできるように、クラウドベースの共有ツールを導入します。これにより、情報の遅延や漏れを防ぎ、迅速な意思決定が可能となります。
  • タスク管理の効率化: プロジェクト管理ツールを活用して、各メンバーのタスクを管理し、進捗状況を可視化します。これにより、全員が自分の役割を理解し、目標に向かって効率的に業務を進めることができます。
  • コミュニケーションの円滑化: チャットツールやビデオ会議ツールを活用して、チーム内のコミュニケーションを活性化します。これにより、リモートワークでも円滑な連携が可能となり、プロジェクトの進行をサポートします。
  • データの一元管理: プロジェクトに関連するすべてのデータやドキュメントを一元管理し、必要な情報をすぐに見つけられるようにします。これにより、情報の検索や整理が容易になり、業務の効率が向上します。

10. リスク管理と対応策

新規事業には多くのリスクが伴いますが、それらを適切に管理し、対応策を講じることが事業の成功に不可欠です。リスク管理とは、事前にリスクを特定し、その影響を評価し、リスクが現実化した場合に迅速に対応できる体制を整えるプロセスを指します。これにより、事業の失敗を防ぎ、安定した成長を実現することが可能です。
リスク管理には以下の手法を用います。

  • リスクの特定: 事業の進行過程で発生し得るリスクを洗い出し、そのリスクが事業にどの程度の影響を与えるかを評価します。リスクの特定には、過去の事例や市場の動向を参考にし、潜在的なリスクを見逃さないようにします。
  • リスク対応策の策定: 各リスクに対する対応策を事前に策定します。たとえば、資金不足のリスクに対しては、緊急時の資金調達計画を用意するなど、具体的な対応策を準備します。リスク対応策は、できるだけ具体的かつ実行可能なものとし、リスク発生時に迅速に行動できるようにします。
  • リスク管理のモニタリング: 事業の進捗を定期的に評価し、リスク管理の状況をモニタリングします。リスクの発生確率や影響度が変化する場合、それに応じて対応策を見直し、改善を行います。リスク管理のプロセスは、事業の進行に伴い常にアップデートされるべきです。

11. 人材確保と組織構築

新規事業の成功には、優秀な人材の確保と強固な組織の構築が欠かせません。人材確保とは、事業に必要なスキルや経験を持つ人材を適材適所に配置することであり、組織構築とは、事業を推進するための効果的なチームを編成し、全員が一丸となって目標を達成できるようにすることです。
人材確保と組織構築においては、以下の点に注目します。

  • 必要なスキルセットの明確化: 新規事業に必要なスキルセットを明確にし、そのスキルを持つ人材を採用します。これには、専門的な技術や知識を持つ人材だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力に優れた人材も含まれます。
  • トレーニングと育成プログラム: 採用した人材が最大限に能力を発揮できるよう、トレーニングや育成プログラムを設けます。これにより、メンバーが新規事業の目標達成に向けてスキルを向上させ、チーム全体のパフォーマンスが向上します。
  • 効果的なチームビルディング: チームメンバーが協力し合い、相互に補完し合う関係を築けるよう、チームビルディングを行います。コミュニケーションや協力を促進するための仕組みを整え、全員が同じ目標に向かって進める環境を作ります。
  • 組織文化の醸成: 新規事業に適した組織文化を醸成し、全員が同じ価値観を共有できるようにします。これにより、組織内での協力やコミュニケーションが円滑になり、事業の成功に向けた一体感が生まれます。

12. 継続的な評価と改善

新規事業の進捗を定期的に評価し、必要に応じて改善を行うことが、事業の成功に不可欠です。事業を進める中で、計画通りに進んでいるかどうかを評価し、必要があれば軌道修正を行います。継続的な評価と改善を行うことで、事業の成果を最大化し、持続的な成長を実現することが可能となります。
継続的な評価と改善のプロセスには、以下のステップが含まれます。

  • 定期的な進捗評価: 事業の進捗を定期的に評価し、目標が達成されているかどうかを確認します。進捗評価は、事業計画で設定したKPI(重要業績評価指標)に基づいて行われ、計画との差異を分析します。
  • PDCAサイクルの実践: 計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のサイクルを繰り返し実践します。このサイクルを通じて、事業の課題を洗い出し、それに対する改善策を講じることで、事業の効果を最大化します。
  • フィードバックの活用: 事業の進捗評価の結果やチームメンバーからのフィードバックを活用し、必要な改善策を講じます。フィードバックをもとに、事業の方向性や戦略を柔軟に見直し、持続的な成長を実現します。

13. 新規事業の撤退基準と再挑戦のプランニング

新規事業にはリスクが伴うため、必要に応じて事業の撤退を判断することも重要です。撤退基準を事前に設定し、事業が期待通りの成果を上げられなかった場合には、速やかに撤退する決断を下すことが求められます。また、撤退後も次に向けた再挑戦のプランニングを行い、経験を次に活かすことが重要です。
撤退基準の設定と再挑戦のプランニングにおいては、以下の点を考慮します。

  • 撤退基準の設定: 事業の成否を判断するための定量的な基準を設定します。売上や利益、顧客数など、事業のパフォーマンスを測る指標を設定し、その達成度合いに応じて撤退を決定します。撤退基準は、事業開始前に明確に定めておくことが重要です。
  • リスクマネジメントの強化: 撤退基準に達した場合でも、事業全体への影響を最小限に抑えるためのリスクマネジメントを強化します。撤退後の資産やリソースの再配分を計画し、無駄を最小限に抑えます。
  • 再挑戦のプランニング: 撤退後も、過去の経験を活かした再挑戦のプランニングを行います。失敗から学んだ教訓を次に活かし、再度の成功を目指します。再挑戦では、過去のデータを分析し、改善策を取り入れた新たな事業計画を策定します。

13-1. 撤退基準の設定とリスクマネジメント
新規事業にはリスクがつきものです。そのため、事業の進行中に事前に設定した撤退基準に達した場合、速やかに撤退を決断することが重要です。この撤退基準は、事業の初期段階で明確に定めておくべきであり、感情に左右されずに合理的な判断を下せるよう、定量的な指標(売上目標、利益率、顧客獲得数など)に基づく基準を設定します。
撤退基準の設定には、いくつかの重要な要素があります。まず、事業が計画通りに進まなかった場合に、どの時点で事業を終了するかを明確にすることです。この基準は、事業が赤字になった場合や、予期せぬ外部要因によって市場環境が劇的に変化した場合に特に重要です。撤退を決定するタイミングを見誤ると、企業全体に深刻な影響を与える可能性があるため、事前に十分な検討が必要です。
また、撤退後のリスクマネジメントも重要です。撤退が決定された場合、その影響を最小限に抑えるためのプランを準備しておくことが必要です。これには、従業員の配置転換や再教育、使用していたリソースの再配分、そして撤退に伴う損失を最小化するための財務対策が含まれます。撤退後の再挑戦を視野に入れた計画も、この段階で検討しておくと良いでしょう。

13-2. 再挑戦のプランニングと次のステップ
事業撤退後でも、過去の経験を糧に再挑戦の道を模索することは、企業の成長にとって非常に重要です。撤退を単なる失敗と捉えるのではなく、学びの機会と捉え、再挑戦に向けたプランニングを行うことが、次の成功を引き寄せる鍵となります。
再挑戦のプランニングでは、まず撤退に至った原因を徹底的に分析し、どの部分が問題だったのかを明確にします。この分析は、次の事業計画を策定する際の貴重なデータとなり、同じ過ちを繰り返さないための指針となります。また、成功している他の企業や事例を参考にし、ベストプラクティスを学ぶことも重要です。
次に、改善策を取り入れた新たな事業計画を策定します。この計画には、撤退前の失敗から得た教訓を反映させ、より現実的で実行可能な戦略を含めます。市場の再分析や、ターゲット顧客の再定義、競合環境の再評価などを行い、事業の新たな方向性を確立します。
再挑戦に向けたステップでは、チームのモチベーションを再度高めることも重要です。撤退の経験から得た知識やスキルを活かし、次の事業に取り組むことで、チーム全体が一丸となって新たな目標に向かって進むことができます。また、再挑戦には新たなリソースの投入が必要となるため、資金調達やパートナーシップの強化も同時に進めることが求められます。
最後に、再挑戦においては、柔軟性を持つことが重要です。初回の事業で失敗した要因を踏まえ、計画の実行段階でも状況に応じて適宜軌道修正を行うことで、次の成功を確実なものにすることができます。

14. 環境・社会的責任(ESG)の考慮

新規事業を行う際には、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点を考慮することが重要です。企業の社会的責任を果たすために、環境保護や社会貢献活動を積極的に取り入れることが求められます。また、透明性のあるガバナンス体制を構築し、ステークホルダーとの信頼関係を築くことが重要です。
ESGの考慮においては、以下の点を実践します。

  • 環境保護の取り組み: 新規事業において、環境保護の取り組みを積極的に行います。例えば、事業活動の中で発生する環境負荷を最小限に抑えるための施策を講じ、持続可能な開発目標(SDGs)に基づく活動を推進します。これにより、企業の環境への配慮が評価され、ブランド価値が向上します。
  • 社会貢献活動: 地域社会やコミュニティに貢献する活動を積極的に行います。企業が社会的責任を果たすことで、地域社会との信頼関係が強化され、事業活動の円滑な遂行が可能となります。また、従業員のエンゲージメント向上にも寄与します。
  • 透明性のあるガバナンス体制: 透明性のあるガバナンス体制を構築し、ステークホルダーとの信頼関係を築きます。内部統制やコンプライアンスの強化を図り、企業の健全な経営を確保します。これにより、長期的な視点での持続可能な成長が期待できます。

15. まとめ

新規事業を立ち上げる意義とその評価軸を明確にし、プロセスを進めることは、企業の持続的成長にとって不可欠な要素です。本記事では、詳細な事業計画の策定方法や成功事例の紹介、具体的な評価軸、リスク管理、人材確保、組織構築の重要性などを解説しました。これらの要素をバランスよく取り入れ、事業の進め方を明確にすることで、持続的な成長を実現することができます。
新規事業を成功させるためには、計画策定から実行、評価、改善までの全プロセスを徹底的に管理し、適切なリソースを投入することが重要です。また、失敗を恐れずに挑戦し、経験から学び続ける姿勢が求められます。企業が持続的な成長を目指すためには、柔軟な発想と強い意志を持ち続けることが不可欠です。
本記事が、新規事業を立ち上げる際の参考資料として役立つことを願っています。ナイスなビジネスアイデアを実現し、持続可能な成長を目指して、具体的な行動を開始しましょう。新しいビジネスの世界で成功を収めるために、常に前進し続けることが大切です。

16. 船井総研の新規事業開発支援コンサルティングの特徴

船井総研の新規事業開発コンサルティングサービスは、新規事業開発の進め方・勝てる戦略・計画の立案から事業案探し、評価、立ち上げ、展開に至るまで、幅広いサポートをご提供します。
経験豊富なコンサルタントが最新のデータやノウハウをもとに、企業様の新規事業開発をご支援いたします。

①新規事業専門のコンサルタントが直接サポート
単なる案の作成にとどまらない、事業立ち上げを経験しているからこその厳しい視点から事業案を評価し、ブラッシュアップしていきます。
事業案に応じて、弊社業種別コンサルタントの知見も導入します。

②自社の強みを活かした事業案の立案
自社の強みについての認識を各部署から集約し、多数の企業をご支援させて頂いている弊社コンサルタントの外部の視点も加えて、自社の強みを特定します。

③会社トップ層に刺激を与え、新しいことを考え続ける組織能力を獲得
各自が事業を自分で完成させるため、様々な未知の領域の情報を収集し、足を使って現場に行って調査する経験を積んで頂くことで、新しいことを考える癖付けができます。


執筆: B-search

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