New business Column
新規事業コラム
2024.07.22

新規事業を始める際に欠かせない「事業計画書」の解説・基礎知識・作成のポイント

事業計画書は、企業の将来計画を体系的にまとめた重要な文書です。新しい事業を立ち上げる起業家や事業者が、提供する商品やサービスの詳細、目標市場、市場性、そして資金の計画を明確に示します。この文書は、事業の全体像を示すだけでなく、投資家への資金調達や銀行からの融資申請時に不可欠です。ここでは、事業計画書の作成の方法、有効な書き方、その経営における利点を解説し、必要な支援と知識を紹介します。資金調達の過程でどのようにこの文書が役立つかも掘り下げます。

1. 事業計画書とは?


事業計画書は、起業や事業展開の際に必要な要素を整理し、可視化したものです。起業家や小規模事業者が、自分の事業をどのように進めるかを明確にし、銀行や投資家に対して信頼性を示すための重要な書類です。事業計画書は、事業の概要、ターゲット市場、競争環境、収益予測、資金計画、マーケティング戦略など、事業のすべての要素を網羅的に記述します。これにより、事業全体の見取り図が得られ、計画を実行に移す際のガイドラインとして機能します。また、事業計画書は資金調達の際に不可欠な書類であり、銀行や投資家に対して事業の将来性や収益性を示す役割を果たします。

事業計画書の作成は、経営者自身にとっても事業の理解を深める貴重な機会となります。計画書を作成する過程で、自身のビジネスモデルや市場の理解が深まり、潜在的なリスクや課題も明確になります。これにより、事前に対策を講じることが可能となり、事業の成功率が高まります。

さらに、事業計画書は従業員やパートナーとのコミュニケーションツールとしても活用できます。計画書を共有することで、事業の方向性や目標が明確になり、全員が一丸となって目標達成に向けて努力することができます。

2. 事業計画書の目的

事業計画書は、事業の計画を分かりやすく整理し、銀行や投資家に対して事業の成長性や信頼性を説明するためのものです。資金調達のためだけでなく、事業の方向性を明確にし、チーム内で共有するためにも重要です。具体的には以下のような目的があります。

事業の全体像を明確にする
事業計画書は、事業の目的、戦略、ターゲット市場、競争環境、収益モデルなどを詳細に記述することで、事業の全体像を明確にします。これにより、事業の方向性がはっきりと示され、計画的な事業運営が可能になります。

資金調達をスムーズにする
事業計画書は、銀行や投資家に対して事業の信頼性を示すための重要なツールです。具体的なデータや計画を示すことで、資金提供者の信頼を得やすくなります。また、計画書を提出することで、資金調達がスムーズに進むことが期待できます。

事業のリスクを事前に把握する
事業計画書を作成する過程で、市場分析や競合分析を行うことで、事業のリスクや課題が明確になります。これにより、事前にリスク対策を講じることができ、事業の成功率を高めることができます。

事業の進捗管理を容易にする
事業計画書は、事業の進捗状況を管理するための基準となります。計画書に記載された目標や指標に基づいて、事業の進捗を定期的にチェックすることで、軌道修正が容易になります。

従業員やパートナーとのコミュニケーションを円滑にする
事業計画書を共有することで、従業員やパートナーとの間で事業の方向性や目標が共有されます。これにより、全員が同じ目標に向かって努力することができ、チームの一体感が高まります。

3. 事業計画書作成のメリット


事業計画書を作成することで得られるメリットは多岐にわたります。主なメリットを以下に示します。

思考の整理と可視化
事業の目的や方向性、具体的な計画を整理し、可視化することで、計画が明確になります。これにより、経営者自身の考えが整理され、事業の全体像が見えてきます。また、具体的な計画が明示されることで、実行に移す際のガイドラインとしても役立ちます。

方向性の共有
事業の計画は、経営者や創業者の頭の中にあることが多く、とくに数人で起業する場合は、「事業が今後どのような方向に進むのか」について齟齬が生じることがあります。事業計画書があれば、認識を共有でき、同じ方向を向いて事業を運営できます。

資金調達がしやすくなる
資金調達の際には、銀行や投資家などの資金提供者に事業の目的や概要を説明する必要があります。また、事業計画書そのものの提出を求められることが多いといわれています。事業計画書を活用することで、口頭の説明だけでは伝わりきらないことを正確に伝えられます。事業計画をきちんと考えて作成すると資金面での課題や改善策もおのずと浮き彫りになり、収益の見込みも含めて資金計画も立てやすくなります。

リスクの把握と対策
事業計画書を作成する過程で、市場分析や競合分析を行うことで、事業のリスクや課題が明確になります。これにより、事前にリスク対策を講じることができ、事業の成功率を高めることができます。例えば、競合他社の動向を把握し、自社の強みを生かした戦略を立てることで、競争力を高めることができます。

事業の進捗管理
事業計画書は、事業の進捗状況を管理するための基準となります。計画書に記載された目標や指標に基づいて、事業の進捗を定期的にチェックすることで、軌道修正が容易になります。これにより、計画通りに事業を進めることができ、目標達成に向けた具体的なアクションを取ることが可能になります。

従業員やパートナーとのコミュニケーション
事業計画書を共有することで、従業員やパートナーとの間で事業の方向性や目標が共有されます。これにより、全員が同じ目標に向かって努力することができ、チームの一体感が高まります。また、事業計画書を基にミーティングを行うことで、具体的な課題や解決策を共有しやすくなります。

4. 事業計画書の書き方

必要な項目
事業計画書には特定の書式はありませんが、一般的に以下の項目を含めることが推奨されます。

例)

項目 内容
名称 ABCオフィスコーヒーサービス
ターゲット層 中小企業、大企業のオフィス、コワーキングスペース
提供価値 高品質なコーヒーとティーの提供、オフィス内のリラックススペースの提案、定期的なメンテナンスと補充サービスの実施
市場調査 ターゲット層の85%が高品質なコーヒーとリラックスできるスペースの提供を求めていると回答
市場規模 年間5億円の市場規模を予測
収益モデル 定期的なコーヒーおよびティーの供給契約、リラックススペースの設計・施工サービス、関連商品の販売(例:コーヒーマシン、フィルターなど)
競争優位性 高品質なコーヒー豆とティーの使用、バリスタによるトレーニング、オフィス環境に最適なリラックススペースの提供
経営戦略 SNSを活用したマーケティング、業界イベントへの参加、顧客ロイヤルティプログラムの導入
マーケティング戦略 4P/4C戦略
製品 (Product) 高品質なコーヒーとティー、オフィス用コーヒーマシン、リラックススペースの設計・施工
価格 (Price) 定期契約によるリーズナブルな価格設定、ボリュームディスカウントの提供
場所 (Place) オンラインでの注文、定期配送サービス
プロモーション (Promotion) SNS広告、インフルエンサーマーケティング、業界雑誌への掲載、口コミ促進
顧客価値 (Customer Value) 高品質なコーヒーとティーの提供、オフィス環境の改善、リラックスできるスペースの提案
顧客のコスト (Cost to Customer) 定期契約によるコスト削減、オフィス内での生産性向上によるコスト削減
利便性 (Convenience) オンラインでの簡単な注文プロセス、定期的なメンテナンスと補充サービス
コミュニケーション (Communication) 顧客サポートの充実、フィードバックの収集と迅速な対応
販売戦略 (営業戦略) テイクアウトサービスの強化、オンライン販売の展開
KGI (重要目標達成指標) 初年度売上: 1億円、3年目: 2億円
KPI (重要業績評価指標) 月次新規契約件数: 50件、顧客満足度: 90%以上
KFS (重要成功要因) 高品質な製品とサービスの維持、迅速な顧客対応、効果的なマーケティング戦略の実行
経営者 山田太郎
設立年月 2024年4月
所在地 東京都渋谷区
ミッション 最高のコーヒー体験を提供し、オフィスの生産性とリラックスをサポートする

説得力のある書き方のコツ
事業計画書を作成する際には、可能な限り具体的な数字やデータを使用することが重要です。数字が提示されていないと、「分析不足」「データ不足」といった印象を持たれやすくなります。一般的には、政府系の機関が公表している統計などは信頼性も高く活用できると考えられています。またユーザーアンケートなど自身で調査した結果を掲載することも、ビジネスの実現性を示すのに効果的です。

具体的なデータを使用することで、計画の信頼性が高まり、説得力が増します。例えば、ターゲット市場の規模を示す際には、具体的な市場調査の結果や統計データを引用します。また、収益予測を示す際には、具体的な販売目標や価格設定を明示し、その根拠を示します。

5. 事業計画書を作るときの注意点

内容の具体性と分かりやすさ
事業計画書に記載する内容は、できるだけ具体的で分かりやすくまとめることが求められます。専門用語の使用は最小限にし、必要に応じて注釈を付けるなど、専門外の人にも理解しやすい表現を心がけます。また、グラフや表を活用して視覚的に理解しやすくすることも効果的です。

例えば、売上予測を示す際には、具体的な数値だけでなく、グラフやチャートを使用して視覚的に示します。また、事業の強みや競争優位性を説明する際には、具体的な事例やデータを用いて説得力を持たせます。

数値の根拠
事業計画書に記載する数値は、必ず根拠を持って提示することが重要です。例えば、売上の見込みを示す際には、その数値がどのように算出されたかを明確に説明します。具体的な実現方法や、裏付けとなるデータを併記することで信頼性が増します。

例えば、「売上が10%増加」といった見込みを示す場合、その増加がどのような施策によって実現されるのか、具体的な計画を示します。また、競合他社との比較データを用いることで、自社の強みや競争優位性を明確にします。

競合について
競合分析は事業計画書において非常に重要な要素です。競合他社の強みや弱みを分析し、自社の優位性を明確に示すことで、計画の説得力が高まります。また、競合分析を通じて市場環境を理解し、ターゲット顧客に対する戦略を具体化することが求められます。

競合分析を行う際には、競合他社の製品やサービス、マーケティング戦略、価格設定などを詳細に調査します。そして、自社の製品やサービスがどのように競合他社と差別化されているのか、具体的な戦略を示します。

6. スタートアップに適した事業計画書

スタートアップ企業においては、特に革新的なビジネスモデルや将来性を強調することが求められます。起業家の経歴やビジネスへの熱意も重要な要素となります。数値データを緻密に組み立てるとともに、魅力的なプレゼンテーションを準備し、出資者に対して強い印象を与えることが重要です。

スタートアップ企業は、これまでにない新たなビジネスモデルを作り出し、市場にイノベーションを起こすことを目指します。そのため、事業計画書には、ビジネスモデルの新規性や将来性を強調することが求められます。また、起業家自身の経歴や実績、ビジネスに対する強い想いも重要な要素となります。

事業計画書には、具体的な収益モデルや市場分析、競合分析などを詳細に記述し、ビジネスの実現性を示します。また、ビジネスの将来性や成長戦略を明確に示すことで、出資者に対して強い印象を与えます。

7. 事業計画書の完成後にすべきこと

7. 事業計画書の完成後にすべきこと
事業計画書が完成したら、まず自分自身でチェックし、次に周りの人に見てもらうことが重要です。第三者の視点からフィードバックを受けることで、新たな気づきや改善点が見つかることがあります。また、提出先に向けたプレゼンテーションの練習を行い、アピールポイントを的確に説明できるように準備します。

例えば、事業計画書を業界の専門家や経験豊富な経営者に見てもらうことで、具体的なアドバイスや改善点を得ることができます。また、事業計画書のプレゼンテーションを行う際には、強みや魅力を効果的に伝えるためのスライドや資料を準備し、プレゼンテーションの練習を行います。

8. 事業計画書に関するよくある疑問

Q. 事業計画書と創業計画書は違うものですか?
創業計画書は、特にこれから開業する場合に作成されるもので、事業計画書と同じ意味を持ちます。創業計画書には、創業への想いや会社代表者のプロフィールなどが記載されることが多いです。

Q. 事業計画書はどの段階で準備すればよいのですか?
事業計画書は、銀行への融資申し込みや投資家への出資打診の際に準備します。具体的には、資金調達を行う前に事業計画書を作成し、資金提供者に対して提出します。

Q. 事業計画書をつくれば融資、出資は受けられますか?
事業計画書だけでは融資や出資が確実に受けられるわけではありません。事業計画の内容やプレゼンテーションの質、経営者の実績や信用力など、総合的な判断が行われます。そのため、事業計画書だけでなく、他の要素も重要です。

Q. 数字の根拠はどうやって出せばいいのですか?
統計データや業界平均など、信頼性の高いデータを参考にして算出します。例えば、政府系の機関が公表している統計データや業界団体のレポートなどを活用します。また、自身で実施した市場調査やユーザーアンケートの結果も有効です。

Q. 将来の収支計画の立て方は?
将来の収支計画は、売上高やコストの見込みを基に計算します。具体的には、「単価×月間の販売数量」などの計算方法を用い、目標としている販売数量の割合を決めて将来の売上高の推測値を計算します。また、同じ業種や類似業種のデータも参考にします。

9. 説得力のある事業計画書で起業準備をスムーズに

事業計画書は、事業をスタートさせる上で重要なドキュメントです。事業計画通りに進まない場合は軌道修正を行い、継続的に見直しを行うことで、事業を成功に導くことができます。事業計画書を作成する際には、具体的なデータや根拠を示すことで、説得力を持たせることが重要です。

また、事業計画書は一度作成して終わりではありません。事業の進捗状況や市場環境の変化に応じて、定期的に見直しや更新を行うことが求められます。これにより、事業計画が常に現実的で実行可能なものとなり、事業の成功率が高まります。

11. 事業計画書の活用方法

事業計画書は、以下のような場面で活用されます:

資金調達
銀行や投資家に対して事業の信頼性を示し、資金調達を行う際に使用されます。具体的なデータや計画を示すことで、資金提供者の信頼を得やすくなります。

事業の進捗管理
事業計画書を基に、事業の進捗状況を定期的にチェックします。計画通りに進んでいるか、目標達成に向けた具体的なアクションが取れているかを確認します。

従業員やパートナーとのコミュニケーション
事業計画書を共有することで、従業員やパートナーとの間で事業の方向性や目標が共有されます。これにより、全員が同じ目標に向かって努力することができ、チームの一体感が高まります。

事業の見直し
事業計画書は、事業の進捗状況や市場環境の変化に応じて定期的に見直しを行います。計画が現実的で実行可能なものとなるように、必要に応じて修正や更新を行います。

12. 事業承継のための事業計画書

事業承継を考える際には、事業計画書が重要な役割を果たします。事業承継計画には、事業の現状や将来の計画、後継者の育成計画などを詳細に記述します。

事業の現状分析
事業承継計画には、事業の現状を詳細に分析し、強みや課題を明確にします。これにより、後継者が事業を引き継ぐ際の基盤を整えます。

後継者の育成計画
事業承継計画には、後継者の育成計画を詳細に記述します。具体的な育成プログラムや教育計画を示し、後継者が円滑に事業を引き継ぐためのサポートを行います。

将来のビジョン
事業承継計画には、将来のビジョンや目標を明確にします。後継者が事業を引き継ぐ際の方向性を示し、長期的な視野での計画を立てます。

13. 事業計画書の更新と見直し

事業計画書は、一度作成して終わりではありません。事業の進捗状況や市場環境の変化に応じて、定期的に見直しや更新を行うことが求められます。

定期的な見直し
事業計画書は、少なくとも年に一度は見直しを行います。市場環境や競合状況、事業の進捗状況を踏まえて、計画を修正や更新します。

変更点の反映
事業計画書の見直しでは、変更点を反映し、最新の情報を基に計画を更新します。具体的なデータや分析結果を活用し、現実的で実行可能な計画にします。

フィードバックの活用
事業計画書の見直しには、従業員やパートナー、専門家からのフィードバックを活用します。第三者の視点を取り入れることで、より質の高い計画を作成します。

以上が、事業計画書の作成に関する詳細なガイドラインです。事業計画書を適切に作成し、定期的に見直しや更新を行うことで、事業の成功に向けた具体的なアクションを取ることが可能になります。

14.船井総研の事業計画書支援コンサルティングの特徴

船井総研では上記のポイントを踏まえたご支援を行っています。事業計画書支援コンサルティングサービスは、事業計画の進め方・勝てる戦略・計画の立案から事業案探し、評価、立ち上げ、展開に至るまで、幅広いサポートをご提供します。経験豊富なコンサルタントが最新のデータやノウハウをもとに、企業様の事業計画書作成をご支援いたします。ポイントは以下の5つです。

①ワンストップ・一気通貫型
ビジョンの策定から戦略構築、現場での業績アップや伴走支援、さらにはデジタル領域までの一気通貫・一社完結型でのワンストップコンサルティングが可能です。

②専門性
各業種・業界の専門コンサルタントチームによる、業種・業界のツボを押さえた計画策定により短期間で実効性の高い計画策定が可能です。

③具体性と一貫性
現場での支援を得意とするコンサルタントチームにより戦略・戦術レベルまで落とし込むことで、「何を」「どの順で」実行すれば計画が達成されるかが見える化されます。

④実現可能性
経営層だけでなく現場メンバーの腹落ちを重視したプロセス(繰り返しのMTGの実施)により、共感し納得できる事業計画書を作ることで「行動」に結びつく計画策定が可能です。

⑤デザイン性
船井総研自体が上場企業でもあり、中期経営計画書の対外発信を重要視している。そういった経緯もあり、社外発信するために資料のデザイン細部にまでこだわった作成代行が可能です。

14.1 成果物のイメージ

ご支援では主に以下の物を作成・提出させていただきます。


執筆: B-search

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