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新規事業コラム
2024.07.05

新規事業開発に有効な「ペルソナ設定」の進め方

顧客の価値観やライフスタイルの多様化に伴い、マーケティングや新規事業開発において「ペルソナ」の重要性が高まっています。この「ペルソナ」は見込客を考える際によく使われる概念ですが、従来の「ターゲット」とは何が異なるのでしょうか? さらに、ペルソナを効果的に設定するにはどうすればよいのでしょうか? ここでは、ペルソナの概要と具体的な作成方法についてご紹介します。

1. ペルソナ設定とは、典型的なユーザー像の具体化

ペルソナ設定は、企業が提供する製品やサービスを利用する典型的なユーザー像を具体化する手法です。ペルソナとは、名前、年齢、職業、趣味、行動パターンなどの詳細な属性を持ち、仮想の人物として描かれます。このプロセスを通じて、ターゲットユーザーの価値観やニーズをより深く理解し、的確なマーケティングや製品開発が行えます。
ターゲット設定と比較して、ペルソナ設定は具体的な生活や心理的な背景を考慮するため、マーケティング戦略の精度が高まります。ペルソナが明確であるほど、製品やサービスがターゲットユーザーの問題解決にどのように役立つかをリアルにイメージできるようになります。また、ペルソナは単なるデータや統計ではなく、企業全体が共有する共通のビジョンとなり、チーム間のコミュニケーションや意思決定を円滑にする役割も果たします。
ペルソナ設定は、製品の設計やマーケティング戦略の基盤となり、全てのステークホルダーが共有する指針として機能します。これにより、ユーザーのニーズを中心に据えたアプローチが可能になり、結果として顧客満足度の向上とビジネスの成功に貢献します。

2. なぜペルソナを設定するのか?

ペルソナ設定は、ユーザー視点に立ったマーケティング戦略を構築するために不可欠です。具体的なペルソナを設定することで、ターゲットユーザーの行動や心理を深く理解し、以下のようなメリットが得られます。
● ニーズの明確化: ペルソナを設定することで、ユーザーの具体的なニーズや課題が明確になります。これにより、製品開発やマーケティング活動がユーザーの期待に応える形で進行しやすくなります。
● マーケティング効果の向上: 具体的なペルソナがあることで、マーケティングメッセージや広告の効果が高まり、ターゲットユーザーに対する訴求力が強まります。たとえば、ターゲット層がよく利用するメディアや購入動機に応じて適切なコミュニケーションが取れます。
● 効率的なプロジェクト進行: ペルソナを共有することで、チーム全体が同じターゲット像を持ち、プロジェクトをスムーズに進行させることができます。これにより、方向性のずれや無駄なリソースの投入を防ぐことができます。
ペルソナ設定は、新規事業開発や既存事業の改善においても、その効果を発揮します。顧客の視点から製品やサービスを再評価することで、新しいビジネスチャンスの発見や市場での競争力向上に寄与します。
ペルソナ設定によって得られたインサイトは、ターゲットユーザーの購買行動を予測し、効果的なプロモーションや製品改善に活用されます。結果として、ユーザーのエンゲージメントを高め、ブランドロイヤルティの向上にも繋がります。

3. ペルソナ設定の方法

ペルソナ設定の具体的な方法について説明します。ここでは、ペルソナ「田中 英明」を例に、その設定プロセスを解説します。

1. 情報収集: ペルソナ設定の第一歩は、ターゲット市場に関する情報収集です。アンケート、インタビュー、既存の市場データを基に、ターゲットユーザーの行動パターンやニーズを明確にします。
2. データの分析: 収集したデータを分析し、共通の特徴や行動パターンを洗い出します。このプロセスでは、年齢、性別、職業などの基本属性に加えて、ライフスタイルや消費行動の傾向も重要な要素として考慮します。
3. ペルソナのプロファイル作成: 得られた情報を基に、以下のようにペルソナのプロファイルを作成します。
○ 名前: 田中 英明
○ 年齢: 35歳
○ 職業: ITコンサルタント
○ 居住地域: 大阪 北区
○ 家族構成: 既婚、2児の父
○ 趣味: ジョギング、ガジェット収集
○ 情報収集方法やSNSの活用: SNSや専門サイトが中心(具体的なアプリやサービス名を記載)
○ 好きな雑誌、テレビ番組、音楽など: テクノロジー系の雑誌やポッドキャスト
○ 友人や家族との連絡方法: メッセージングアプリ(具体的なアプリやサービス名を記載)
○ 休日の過ごし方: 家族と公園で過ごす、ランニングイベントに参加
○ よく買い物をする場所: 梅田、新大阪
○ 買い物をする際の判断基準: 最新機能と口コミ評価を重視
○ 料理の頻度: 週末に家族と料理
○ 家電の購入場所: オンラインショップ
○ 家電の消費傾向: 機能性を重視して購入
4. ペルソナのストーリー作成: プロファイルを基に、以下のように田中 英明の具体的な生活シーンやニーズを描きます。彼が日常でどのような課題に直面し、どのような解決策を求めているのかをストーリー形式で具体的に記述します。

4. ペルソナ設定の注意点

ペルソナ設定を行う際には、いくつかの注意点があります。
● 現実的な設定を心がける: ペルソナはデータに基づいた現実的な人物像であるべきです。過度に理想化されたペルソナは、実際のユーザーとの乖離を招き、マーケティング戦略の効果を低下させるリスクがあります。
● 柔軟な見直し: ペルソナは固定的なものではなく、市場の変化や新たなデータに応じて柔軟に見直す必要があります。定期的なペルソナのアップデートを行い、常に現実に即した人物像を維持しましょう。
● 共有と共通理解: ペルソナ設定はチーム全体で共有し、全員が共通の理解を持つことが重要です。ペルソナを視覚的に示し、プロジェクトのすべての段階で参照することで、認識のずれやコミュニケーションミスを防ぎます。
● データに基づく: ペルソナ設定は感覚や経験だけでなく、できる限りデータに基づいて行うべきです。インタビューやアンケート、SNS分析などを通じてリアルなユーザーの声を反映させましょう。
ペルソナは理論上のものではなく、ユーザーの実態を反映したものである必要があります。これにより、ペルソナがリアルなマーケティングツールとして機能し、戦略の成功に繋がります。

5. ペルソナ設定の成功事例

ペルソナ設定の成功事例として、あるオンライン教育プラットフォームを取り上げます。このプラットフォームは、新規コースの開発に際し、「働きながら学ぶ30代のビジネスパーソン」というペルソナを設定しました。ペルソナは、日中は企業で働きながら、夜間や週末にスキルアップを目指す人物像で、彼の行動パターンやニーズを詳細に分析しました。
その結果、柔軟なスケジュールと高い実践性を重視したコース内容が設計され、プラットフォームの利用者数が急増しました。また、このペルソナに基づくマーケティングキャンペーンも展開し、忙しいビジネスパーソンに刺さるメッセージを発信することで、高いコンバージョン率を達成しました。この成功事例から、ペルソナ設定が製品開発やマーケティングに与える影響の大きさが明らかです。
この事例は、ペルソナ設定がいかにターゲットユーザーの理解を深め、製品やサービスの提供方法に直接的な影響を与えるかを示しています。特に競争の激しい市場においては、ペルソナ設定が市場での差別化に大きく寄与することが分かります。

6. ペルソナ設定の失敗事例

ペルソナ設定が失敗した事例には、あるフィットネス機器メーカーがあります。このメーカーは、新製品のターゲットとして、若年層の運動愛好者を想定しましたが、実際のターゲット層がより高齢で、健康維持のために軽い運動を望んでいる層であることに気付きませんでした。
この結果、製品の機能やプロモーション内容がターゲットのニーズと一致せず、販売不振を招きました。この失敗の原因は、ペルソナ設定が企業内の推測に基づいて行われ、実際の市場調査や顧客インタビューが不足していたことです。正確なペルソナ設定には、データに基づいた現実的な顧客像を描くことが重要です。
この事例は、ペルソナ設定におけるデータの重要性と、市場調査の欠如がどれほどマーケティング活動に影響を与えるかを示しています。ペルソナがターゲットと一致しない場合、ビジネス全体の戦略が大きく狂うリスクがあることがわかります。

7. ペルソナ設定のツールとテンプレート

ペルソナ設定には、さまざまなツールやテンプレートが役立ちます。以下に代表的なものを紹介します。
● Google Forms: 顧客アンケートを作成してターゲット層の情報を収集するのに便利です。
● Xtensio: 視覚的にペルソナを作成できるテンプレートが提供されています。
● HubSpot: ペルソナ作成のためのテンプレートやガイドが利用でき、詳細なペルソナプロファイルの作成が可能です。
テンプレートを活用することで、ペルソナ設定の基本的なプロセスを効率化し、チーム全体で共有しやすくなります。また、ペルソナプロファイルに加えて、ペルソナのストーリーや行動パターンを記述するテンプレートも提供されており、より具体的な人物像を描くのに役立ちます。
これらのツールは、ペルソナの設計プロセスを標準化し、全てのチームメンバーが容易に理解できる形式で情報を提供するのに役立ちます。視覚的で理解しやすいツールを用いることで、プロジェクトの初期段階からペルソナを効果的に活用することができます。

8. ペルソナとカスタマージャーニーの連携

ペルソナ設定はカスタマージャーニーと密接に関連しています。カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスを認知し、購入し、使用するまでの一連のプロセスを視覚的に示すツールです。ペルソナを設定することで、ターゲットユーザーがどのような購買行動を取るかを理解しやすくなります。
例えば、ペルソナの田中 英明が、スマートホームデバイスを購入するまでのプロセスを例に取ってみましょう。認知段階では、SNS広告や友人の口コミが主な情報源となります。検討段階では、製品レビューサイトや比較ブログを参考にします。そして、購入段階では、オンラインショップで詳細な機能を確認し、実際の利用シーンを想像しながら選択します。カスタマージャーニーを描くことで、各段階での適切なマーケティング施策を計画しやすくなります。
カスタマージャーニーとペルソナの連携により、ユーザーがどのように製品やサービスと関わり、最終的に購買に至るかの全体像が把握できます。これにより、各フェーズでのマーケティングアプローチを最適化し、ユーザーのニーズに即した体験を提供することができます。

9. ペルソナを活用した新規事業のアイデア発掘

ペルソナ設定は、新規事業のアイデア発掘に大いに役立ちます。具体的な顧客像を持つことで、ターゲットの潜在的なニーズや未解決の問題を発見しやすくなります。ここでは、ペルソナを活用した新規事業のアイデア発掘の方法とその具体例について解説します。

ペルソナを活用した新規事業のアイデア発掘の方法

1. ペルソナの課題抽出: ペルソナが日常生活や業務で直面している課題や不便さを洗い出します。ペルソナのライフスタイルや日々の行動を詳細に分析し、その中で「不便だと感じている点」や「解決策が必要な問題」を特定します。これらの課題を解決するためのアイデアが新規事業の種となります。
2. 市場ニーズの検証: 抽出された課題に対して、どれだけの市場ニーズが存在するのかを検証します。アンケートやインタビュー、SNSでの調査などを通じて、同様の問題を感じている潜在顧客の数を把握します。また、既存の市場調査レポートやデータを参照して、課題の重要性や市場規模を確認します。
3. ソリューションのアイデア出し: ペルソナの課題に対して、どのようなソリューションが有効かをブレインストーミングします。ペルソナがどのような解決策を望んでいるのかを考慮し、具体的な製品やサービスのアイデアを出します。この段階では、チーム全員が自由にアイデアを出し合い、斬新な発想を引き出すことが重要です。
4. プロトタイプの作成と検証: アイデアの中から最も有望なものを選び、プロトタイプを作成します。簡単なモックアップや実際の製品サンプルを用意し、ペルソナに基づいてターゲットユーザーに試用してもらいます。フィードバックを受けてアイデアの改善を繰り返し、実際のニーズに即したソリューションを完成させます。
5. 事業計画の策定: 完成したソリューションを基に、事業計画を策定します。市場分析や競合分析、収益モデルの構築、マーケティング戦略の策定などを行い、ビジネスとしての実現可能性を検討します。ペルソナに基づいたターゲティングとポジショニングを明確にし、事業の方向性を定めます。

ペルソナを活用した新規事業の具体例

例1: スマートホーム市場への新規参入
ペルソナ: 田中 英明
● 職業: ITコンサルタント
● 課題: 忙しい仕事の合間に家庭内の管理や効率化が求められる
● アイデア: スマートホーム管理アプリの開発。家電やセキュリティ、照明などを一元管理でき、AIによる省エネ提案や自動化機能を搭載。仕事中に家庭内の状況を遠隔から確認・操作できる。
ビジネスモデル:
● ターゲット: 忙しいビジネスパーソンや家庭を持つ人々
● 収益源: アプリ内課金、サブスクリプションモデル、パートナーシップによる機器販売
例2: 健康管理市場への新規参入
ペルソナ: 高橋 美奈
● 職業: 40代、企業の管理職
● 課題: 健康維持のために適切な運動や食事を行いたいが時間がない
● アイデア: AIパーソナルヘルスコーチングサービス。個々の健康データやライフスタイルに基づいて、運動や食事のプランを提供し、毎日のフィードバックとモチベーションをサポート。
ビジネスモデル:
● ターゲット: 健康意識が高いが忙しいビジネスパーソン
● 収益源: 月額サブスクリプション、パーソナライズドフィードバックの追加課金

ペルソナ設定のまとめ

ペルソナ設定は、単なるマーケティングツールにとどまらず、企業の製品開発や新規事業開発の根幹を支える重要なプロセスです。ペルソナを詳細に設定し、ターゲットユーザーの深い理解を得ることで、よりユーザー中心のアプローチが可能となり、結果として市場での競争力を高めることができます。
ペルソナ設定を効果的に行うためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
● データに基づいたリアルな設定: ペルソナはデータと実際のユーザーインサイトに基づいて設定し、現実的で具体的な人物像を描くこと。
● 柔軟な更新と共有: 市場の変化や新たなインサイトに応じてペルソナを柔軟に更新し、チーム全体で共有して共通理解を持つこと。
● 新規事業のアイデア発掘に活用: ペルソナを活用して顧客のニーズを深く理解し、新規事業のアイデアを発掘するための基盤とすること。
ペルソナ設定によって、ターゲット市場の潜在的な機会を発見し、具体的な顧客像に基づいた効果的な事業戦略を策定することで、競争の激しい市場での成功を目指しましょう。この手法を取り入れることで、顧客に寄り添った製品やサービスの開発が可能となり、より一層のビジネスの成長と成功を遂げることが期待されます。

10.船井総研の新規事業開発支援コンサルティングの特徴

①新規事業専門のコンサルタントが直接サポート

単なる案の作成にとどまらない、事業立ち上げを経験しているからこその厳しい視点から事業案を評価し、ブラッシュアップしていきます。
事業案に応じて、弊社業種別コンサルタントの知見も導入します。

②自社の強みを活かした事業案の立案

自社の強みについての認識を各部署から集約し、多数の企業をご支援させて頂いている弊社コンサルタントの外部の視点も加えて、自社の強みを特定します。

③会社トップ層に刺激を与え、新しいことを考え続ける組織能力を獲得

各自が事業を自分で完成させるため、様々な未知の領域の情報を収集し、足を使って現場に行って調査する経験を積んで頂くことで、新しいことを考える癖付けができます。
船井総研の新規事業開発コンサルティングサービスは、新規事業開発の進め方・勝てる戦略・計画の立案から事業案探し、評価、立ち上げ、展開に至るまで、幅広いサポートをご提供します。
経験豊富なコンサルタントが最新のデータやノウハウをもとに、企業様の新規事業開発をご支援いたします。


執筆: B-search

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