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新規事業コラム
2024.06.10

フィージビリスタディとは?プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討する4つの手順を解説

1. フィージビリティ・スタディとは?

下記の資料は、新規事業開発プロセスの流れを大きく4つに分類しており、その中でフィージビリティスタディでカバーできる領域は事業性評価と新規事業計画策定になっています。
本記事ではでフィージビリティスタディの詳細について説明します。

フィージビリティ・スタディ(Feasibility Study)は、新しい事業やプロジェクトが実現可能かどうかを事前に評価するための調査です。この調査は、企業や組織が新たな取り組みを開始する前に、その取り組みが成功する可能性(事業性評価)やリスクを総合的に判断するために行われます。フィージビリティ・スタディの目的は、計画の磨きこみや修正や最適案の選定、場合によっては計画の中止などの意思決定を支援することにあります。
例えば、新製品の市場導入を計画する場合、市場調査を通じて需要予測を行い、競争環境や技術的な実現性を評価します。また、経済的な見通しを立て、投資対効果を分析することで、事業の持続可能性を判断します。これにより、企業はリスクを最小限に抑えつつ、成功する可能性の高いプロジェクトを選定することができます。

フィージビリティ・スタディは、大きく事業性評価と新規事業計画策定の2つに分けることができます。以下に事業性評価と新規事業計画策定についての詳細をご説明します。

事業性評価:
事業性評価は、新規事業の成功可能性を見極めるために行う重要なステップです。以下のようなプロセスを通じて実施されます。

  1. 市場調査
    市場調査は、対象となる市場の全体像を把握し、ビジネスチャンスを見つけるための基本的な作業です。このステップでは、市場規模や成長率、競争状況、顧客ニーズなどを詳細に調査します。具体的には、過去から現在の市場動向を分析し、未来の市場予測を行います。また、対象業界のビジネスモデルやサプライチェーン構造の理解も含まれます。
  2. 事業モデルの磨きこみ
    市場調査やアンケート調査等の結果をもとに、事業モデルを詳細に検討し、最適化します。この段階では、ビジネスモデルの各要素(収益モデル、コスト構造、価値提案、運営プロセスなど)を細かく分析し、具体的な戦略を立案します。ターゲット市場の特性に合わせた商品やサービスの設計、価格設定、差別化ポイントの明確化が行われます。
  3. 事業性評価
    事業性評価は、上記の市場調査と事業モデルの磨きこみを基に、事業の実行可能性を総合的に評価するプロセスです。これには、投資対効果(ROI)の算出、リスク分析、収益予測などの詳細な財務分析が含まれます。この評価により、事業の実現可能性と潜在的なリスクが明確化され、意思決定の根拠となります。

新規事業計画策定:
新規事業計画策定は、具体的なビジネスプランを作成し、事業の成功に向けたロードマップを構築するステップです。以下のプロセスを通じて実施されます。

  1. モデル事例調査
    モデル事例調査では、成功事例や失敗事例を調査し、新規事業に適用可能な戦略や戦術を学びます。この調査により、過去の事例から学び、事業計画の基盤を強化します。具体的には、同業界や類似業界での事例を分析し、成功要因や失敗原因を抽出します。
  2. 事業モデルの磨きこみ
    モデル事例調査で得られた知見をもとに、さらに事業モデルを最適化します。この段階では、具体的な戦略や施策の詳細を詰め、新たな知見を取り入れながら事業モデルを洗練させます。特に、ターゲット市場や顧客セグメントに対するアプローチ方法を具体化します。
  3. 新規事業計画策定
    最終的に、新規事業の詳細な計画を策定します。この計画には、事業の目的、目標、戦略、戦術、資源配分、スケジュールなどが含まれます。具体的なアクションプランを立てることで、事業の立ち上げから運営までのロードマップを明確にし、実行可能な計画を作成します。

これらのステップを経ることで、フィージビリティスタディは新規事業の実行可能性を高め、成功の可能性を最大化するための重要な基盤を築くことが可能です。

2. フィージビリティ・スタディの重要性

フィージビリティ・スタディは、特に新規事業を立ち上げる際に不可欠なプロセスです。これにより、事業の実現可能性を確認し、リスクを最小限に抑えることができます。新しい事業やプロジェクトは多くの資源を必要とし、その成功は企業の将来に大きな影響を与えるため、事前に十分な調査と評価を行うことが重要です。
例えば、新しい製品を開発する場合、その技術的な実現性だけでなく、マーケットフィットや競合分析も含めて評価します。これにより、事業が市場で成功するかどうかを事前に見極めることができ、資源の無駄遣いを防ぎます。さらに、フィージビリティ・スタディを通じて得られたデータは、事業計画の改善に役立ち、投資家やステークホルダーへの説明材料としても重要です。
フィージビリティ・スタディの重要性を具体的に理解するためには、以下の点を考慮する必要があります:

  1. リスク管理:新しい事業やプロジェクトには常にリスクが伴います。フィージビリティ・スタディは、これらのリスクを事前に特定し、評価することで、予防策を講じることができます。
  2. 資源の効率的な配分:限られた資源を最も効果的に利用するために、フィージビリティ・スタディを通じて、どのプロジェクトが最も高いリターンをもたらすかを判断します。
  3. 意思決定のサポート:詳細な調査と分析を通じて、経営陣やステークホルダーが情報に基づいた意思決定を行うためのデータと洞察を提供します。
  4. 市場適合性の確認:ターゲット市場のニーズや競合状況を理解し、新製品やサービスが市場に受け入れられる可能性を評価します。
  5. 法的および規制上の遵守:計画中のプロジェクトが法的および規制上の要件を満たしているかを確認し、コンプライアンスを確保します。

3. フィージビリティ・スタディの歴史

フィージビリティ・スタディの概念は、1933年のアメリカでのニューディール政策に遡ります。当時のフランクリン・ルーズベルト大統領が設立したテネシー川流域開発公社(TVA)が、その初期の例です。このプロジェクトは、地域経済の振興とともに、大規模な公共事業の実現可能性を評価するためのモデルとなりました。TVAは、エネルギー供給、洪水制御、農業の改良など多岐にわたるプロジェクトを実施し、その成功はフィージビリティ・スタディの重要性を証明しました。

以来、フィージビリティ・スタディは、ダム建設、空港整備、原子力発電所の建設など、多岐にわたる公共事業において実施され、その重要性が広く認識されるようになりました。特に大規模なインフラプロジェクトでは、多額の投資が必要とされるため、その実現可能性を事前に評価することが不可欠です。

さらに、企業の新規事業開発においてもフィージビリティ・スタディは広く活用されるようになりました。1970年代以降、企業のグローバル化が進む中で、新しい市場への参入や新製品の開発に伴うリスクが増大しました。このため、フィージビリティ・スタディは、新規プロジェクトの成功可能性を評価するための標準的なプロセスとなり、多くの企業が導入するようになりました。

4. フィージビリティ・スタディの手順

フィージビリティスタディの実施フローは下記の資料の通りであり、大きく分けて市場調査、競合調査、ニーズ調査、戦略構築、収益シミュレーション、事業リスク評価に分類されます。
各項目ごとの実施内容について以下に整理しています。

フィージビリティ・スタディを実施するためには、以下の手順を踏むことが一般的です。

4.1 課題の明確化
新規事業に関連する課題を明確にすることが最初のステップです。例えば、技術的な課題として、新技術の開発や既存技術の適用可能性を検討します。財務面では、初期投資や運転資金の見積もり、ROIの計算が重要です。運用面では、必要な人材や組織体制の整備、法的要件の確認などが含まれます。これらの課題を具体的に洗い出すことで、後のステップでの詳細な分析が可能となります。
具体的な課題の明確化には、以下の観点が含まれます:

  1. 技術面:新規事業に必要となる設備やシステムは利用可能か、十分な生産能力を持っているか、開発が必要な場合は求められる技術や知識を持った人材がいるかどうかを確認します。
  2. 財務面:企画段階からサービスのローンチまでに要するコストやROI(投資収益率)を算出し、経済面での実現可能性を判断します
  3. 運用面:事業を持続させるために必要なノウハウ、スキル、適性を持った人材および組織体制の有無、適用される法的要件などを評価します。

課題の明確化においては、各課題をできるだけ具体的に洗い出すことで、事業開発を進める上で思わぬ問題に直面するリスクを低減できるだけでなく、次のステップにおいてより有効な解決策を検討することが可能になります。

4.2 要求事項のリストアップ
次に、課題解決のための具体的な要求事項をリストアップします。例えば、新しいシステムの導入や業務プロセスの改善、必要な人材の採用やトレーニングプログラムの開発などです。また、解決策ごとに必要な期間や費用を見積もり、実行可能性を評価します。これにより、最適な解決策を見つけるための基盤が整います。
具体的には、以下のような要求事項が含まれます:

  1. 業務プロセスの改善:業務の効率化を推進するために導入が必要なプロセスやツールを特定し、それらがどのように課題解決に貢献するかを評価します。
  2. 新システムの開発:機能を充実化させた新しいシステムの開発が必要な場合、その具体的な要件と開発スケジュールを策定します。
  3. チーム・部門の組成:新たなチームや部門の組成が必要な場合、必要な人材や組織体制を明確にし、それに伴うコストや期間を見積もります。
  4. 追加予算の獲得:課題解決のために追加の予算が必要な場合、その具体的な金額と資金調達方法を検討します。

この段階で、「解決までに要する期間・発生する費用」を解決策ごとに算出しておくことが重要です。これにより、現実的かつ効果的な解決策を見つけるための基盤が整います。

4.3 代替案の明確化
一つの解決策に固執するのではなく、複数の代替案を用意することが重要です。例えば、技術的な制約や市場環境の変化に対応できるよう、異なるアプローチや技術を検討します。これにより、柔軟な対応が可能となり、予期せぬ問題が発生した場合にも迅速に対処することができます。
代替案の明確化には、以下の観点が含まれます:

  1. 技術的代替案:主要な技術が実現困難な場合に備え、他の技術的アプローチを検討します。例えば、特定の技術が予期せぬ問題に直面した場合に備え、異なる技術を活用するためのプランを用意します。
  2. 市場代替案:ターゲット市場の状況が変化した場合に備え、異なる市場や顧客セグメントへのアプローチを検討します。例えば、主要な市場が縮小するリスクに対処するために、新しい市場への参入を計画します。
  3. 財務代替案:予算や資金調達が困難になった場合に備え、異なる資金調達方法やコスト削減策を検討します。例えば、主要な投資家からの資金調達が難航した場合に備え、クラウドファンディングやパートナーシップの活用を考えます。

これにより、プロジェクトが直面する可能性のあるリスクや障害に対して柔軟に対応できる体制を整えることができます。

4.4 フィージビリティ・スタディ結果の評価

最後に、フィージビリティ・スタディの結果を総合的に評価します。評価項目には、技術的な実現性、財務的な健全性、法的な適合性、リスク管理、運用上の実行可能性などが含まれます。例えば、新規事業が予定通り進行し、期待される利益を生み出すかどうかを確認します。また、評価結果は、事業の進行を決定する際の重要な判断材料となり、ステークホルダーや投資家への説明にも役立ちます。
具体的な評価項目には、以下のようなものが含まれます:

  1. 技術的実現性:計画された技術が実現可能かどうか、必要な技術リソースが確保できるかを評価します。
  2. 財務的健全性:初期投資や運転資金の見積もり、予測収益、ROI(投資収益率)などを計算し、経済的な実現可能性を評価します。
  3. 法的適合性:プロジェクトが法的および規制上の要件を満たしているかを確認し、コンプライアンスを確保します。
  4. リスク管理:プロジェクトに伴うリスクを特定し、それに対する対策を講じます。
  5. 運用上の実行可能性:必要な人材、組織体制、運営プロセスが整っているかを評価します。

評価の結果は、事業を継続するか否かの判断材料となるだけでなく、融資している企業や投資家の意思決定にも大きく関わります。この評価プロセスは、プロジェクトの成功可能性を高め、リスクを最小限に抑えるための重要なステップです。

5.フィージビリティ・スタディの具体例

フィージビリティ・スタディの具体的な事例として、ある日本の自治体が行った産業廃棄物のリサイクル施設の建設計画を紹介します。この計画では、以下の手順に従ってフィージビリティ・スタディが実施されました。

  1. 課題の明確化:産業廃棄物の発生量や種類を詳細に調査し、リサイクルの可能性を評価しました。具体的には、廃棄物の収集・運搬・処理に関する技術的な課題や、処理施設の運営に必要なコストを明確にしました。
  2. 要求事項のリストアップ:リサイクル施設の建設に必要な技術や設備、運営体制をリストアップしました。例えば、リサイクル工程で使用する機械設備や、廃棄物の分別・処理プロセスを詳細に設計しました。
  3. 代替案の明確化:複数の建設候補地を比較検討し、それぞれのメリット・デメリットを評価しました。また、異なるリサイクル技術や運営モデルも検討し、最適な選択肢を見つけるための代替案を用意しました。
  4. フィージビリティ・スタディ結果の評価:リサイクル施設の建設計画に関する技術的・財務的・運営上の評価を行い、最も実現可能性が高く、コスト効率の良い計画を選定しました。評価結果は、地域住民への影響や環境への配慮も考慮し、総合的な判断材料として用いられました。

このように、フィージビリティ・スタディは、具体的な課題の洗い出しから要求事項のリストアップ、代替案の検討、結果の評価まで一連のプロセスを経ることで、新規事業やプロジェクトの成功可能性を高めるための重要な手法です。

6.まとめ

フィージビリティ・スタディは、新規事業やプロジェクトの成功を左右する重要なプロセスです。詳細な調査と評価を通じて、事業の実現可能性を見極め、リスクを管理し、最適な意思決定を行うことが求められます。このプロセスを経ることで、不確実性の高い事業においても成功確率を高めることが可能となります。

新しい事業やプロジェクトに着手する前に、フィージビリティ・スタディを実施することは、企業の長期的な成功と持続可能な成長を確保するために不可欠です。例えば、新製品の開発や新市場への参入を検討する際には、技術的な実現性、経済的な実現可能性、運用上の実行可能性を包括的に評価することで、成功の確率を高めることができます。

また、フィージビリティ・スタディは、投資家やステークホルダーへの説明材料としても重要です。詳細な調査と評価を基にしたデータは、事業計画の信頼性を高め、資金調達やパートナーシップの構築において重要な役割を果たします。さらに、フィージビリティ・スタディを通じて得られた洞察は、事業計画の改善やリスク管理の強化に寄与し、企業の競争力を向上させることができます。
フィージビリティ・スタディのプロセスは、時間と労力を要しますが、その結果得られる情報と洞察は、事業の成功に不可欠なものです。企業や組織が新しい取り組みを始める際には、フィージビリティ・スタディを通じてしっかりと準備を整え、リスクを管理し、成功への道を切り開くことが重要です。

7.船井総研の新規事業開発支援コンサルティングの特徴

①新規事業専門のコンサルタントが直接サポート

単なる案の作成にとどまらない、事業立ち上げを経験しているからこその厳しい視点から事業案を評価し、ブラッシュアップしていきます。事業案に応じて、弊社業種別コンサルタントの知見も導入します。

②自社の強みを活かした事業案の立案

自社の強みについての認識を各部署から集約し、多数の企業をご支援させて頂いている弊社コンサルタントの外部の視点も加えて、自社の強みを特定します。

③会社トップ層に刺激を与え、新しいことを考え続ける組織能力を獲得

各自が事業を自分で完成させるため、様々な未知の領域の情報を収集し、足を使って現場に行って調査する経験を積んで頂くことで、新しいことを考える癖付けができます。船井総研の新規事業開発コンサルティングサービスは、新規事業開発の進め方・勝てる戦略・計画の立案から事業案探し、評価、立ち上げ、展開に至るまで、幅広いサポートをご提供します。経験豊富なコンサルタントが最新のデータやノウハウをもとに、企業様の新規事業開発をご支援いたします。

④BtoBのフィージビリティスタディに強い

船井総研のニーズ調査の強みとして、船井総研がご支援している企業様に、直接アンケート調査、デプスインタビュー等を実施できる可能性があるという点があります。
各業界の社長様にご意見を頂くことは他社ではなかなか難しく、特定の業界に長く携わっている社長様へのヒアリング等は貴重なご意見になることを確信しております。

 


執筆: B-search

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