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新規事業コラム
2024.06.05

ポジショニングとは ~意味やマーケティング戦略で重要な理由を詳しく解説~

ポジショニングとは?

ポジショニングとは、マーケティング戦略の立案に用いるフレームワークであり、「STP分析」のステップのひとつです。STP分析とは、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの3つの段階から成るフレームワークです。セグメンテーションで、市場を消費者の特性や行動に基づいて細分化し、ターゲティングでセグメントの中から魅力的なターゲットを選び、ポジショニングで競合他社と差別化し、自社の製品やサービスの価値を明確に伝える戦略を構築します。

その中でも、ポジショニングとは企業や製品が市場の中でどのような位置づけを持ち、どのように消費者に認識されるかを戦略的に決定するプロセスのことを指します。ポジショニングはマーケティング戦略の重要な要素であり、企業が競争の中で自社の製品やサービスを他社の競合製品と差別化し、ターゲット市場において魅力的かつ一貫したメッセージを伝えることを目的としています。以下にポジショニングポジショニングが重要な理由や有効性、ポジショニングマップ作成方法について詳しく解説します。

ポジショニングが重要な理由

ポジショニングは、マーケティング戦略において重要視されます。これは、競合商品と自社商品の差別化ポイントを明確にすることで、市場競争で優位に立てるからです。一般的に、同じターゲット層を狙う競合商品は多く存在します。競合が多いほど、消費者に「この商品を選ぶ理由」を感じてもらえなければ、購入にはつながりません。現代ではインターネットで簡単に商品の比較ができるため、他社商品との差別化を的確にアピールする必要があります。このような競合との差別化を行う作業がポジショニングです。

ポジショニングによって、自社商品の特徴や強み、そして市場での立ち位置を明確にすることで、ターゲット層に自社商品ならではの魅力を伝えられるようになります。これにより、消費者は商品の価値を理解しやすくなり、購買意欲が高まります。

ポジショニングの進め方

ポジショニングを進めるにあたって、まずセグメンテーションとターゲティングを行う必要があります。

  1. セグメンテーションは、市場を詳細に分析し、自社が目指すべき市場を明確にするためのプロセスです。具体的には、ターゲット層の特性やニーズに基づいて市場を区分けします。
  2. 次に、ターゲティングは、セグメンテーションで細分化した市場の中から、自社が参入する市場を絞り込む作業です。市場の成長率や顧客ニーズ、競合状況などを総合的に考慮し、目指すべき市場を選択します。
    ただし、必ずしもひとつの市場に絞り込む必要はなく、場合によっては複数の市場を組み合わせる戦略も考慮されます。ポジショニングマップを策定するためには、まずセグメンテーションを通じて目指すべき市場を特定し、その後にターゲティングを進めることが不可欠です。
  3. セグメンテーションとターゲティングが終了したら、次にポジショニングマップを作成します。ポジショニングマップは以下のように作成します。この図は、自社製品がフード市場においてホワイトスペースに位置していることを示しています。具体的には、図の右下にある自社製品は「安くてヘルシー」という特徴を持ち、他の競合が少ない市場セグメントに存在しています。これにより、自社製品は節約しながら健康的な食事を求める消費者に高く評価され、競争の激しい市場で独自の強みを活かすことができます。ブルーオーシャン戦略を通じて、競合との差別化を図り、持続的な成長が期待されます。

ポジショニングマップを作成する際のポイント

ポジショニングマップを作成する際には、以下のポイントに従うことが重要です。

購買決定要因(KBF)を洗い出す
まず、ターゲット市場の消費者が製品やサービスを選ぶ際に重要視する要因(購買決定要因、KBF: Key Buying Factors)を洗い出します。これには、価格、品質、機能、デザイン、ブランドイメージ、利便性などが含まれます。消費者インタビューやアンケート、過去の購買データ分析などを通じて、これらの要因を特定します。
消費者が実際にどの要因を重視しているかを理解することで、より正確なポジショニングマップを作成できます。

購買の要因を絞り込む
次に、洗い出した購買決定要因の中から、特に重要な要因を絞り込みます。すべての要因を考慮することは現実的ではないため、消費者にとって最も影響力の大きい2〜3つの要因を選び出します。
これにより、ポジショニングマップがシンプルで理解しやすくなります。例えば、高級時計市場であれば、「価格」と「ブランドイメージ」、スマートフォン市場であれば、「機能」と「デザイン」などが重要な要因となるかもしれません。

競合他社と比較する
最後に、選び出した購買決定要因を軸にして、競合他社の製品やサービスと自社の製品やサービスを比較します。ポジショニングマップ上に、各社の位置をプロットし、競合他社の強みや弱み、自社の独自性を視覚的に把握します。
これにより、自社の製品やサービスが市場でどのような位置にあるのかを明確にし、競合との差別化ポイントを見つけることができます。例えば、競合が価格競争に注力している場合、自社は品質やブランドイメージで差別化する戦略を取ることが考えられます。

自社の位置を確定する手段として、ポジショニングマップを活用します。競合をマップ上に配置した後、自社が目指すべきポジションを具体化させます。通常、マップ上の空白部分は競合が存在しないため、差別化が比較的容易です。そのため、基本的にはマップ上の空白部分から自社のポジションを選択します。ただし、自社のブランドイメージや理念に合致しているかどうかを確認することが必要です。
たとえば、高級感を打ち出しているブランドが、ポジショニングマップ上で低価格帯のポジションに空白がある場合、そのポジションを狙うことはブランドイメージの損なわれる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。ポジショニングマップの空白部分において、自社の商品やサービスの強みを最大限に活かせるポイントを選択することが重要です。

ポジショニングを設定する際の注意点

貫性の維持
一貫性を保つことは非常に重要です。ポジショニングステートメントは、すべてのマーケティング活動と一致している必要があります。製品の特性やブランドメッセージが矛盾していると、消費者に混乱を与え、ブランドイメージの低下を招く可能性があります。

顧客視点の重視
顧客の視点からポジショニングを考えることが不可欠です。企業が伝えたいメッセージだけでなく、顧客が何を求めているのか、どのような価値を感じるのかを理解することが大切です。顧客のニーズや期待に応えるポジショニングを設定することで、より強い市場での競争力を持つことができます。

競合との差別化
競合他社と明確に差別化できるポジションを選ぶことが重要です。市場には多くの競合が存在するため、競合と同じポジションでは顧客に選ばれることが難しくなります。競合の分析を徹底し、自社の独自性や強みを際立たせるポジションを見つけることが求められます。

ブランドイメージとの一致
ブランドイメージと一致するポジションを選ぶことも重要です。例えば、高級感を訴求するブランドが低価格帯のポジションを取ると、ブランドの信頼性や価値が損なわれる可能性があります。自社のブランドが持つイメージや理念に合ったポジションを設定することで、一貫したブランド体験を提供できます。

市場の変化に対応
市場環境や消費者の嗜好の変化に対して柔軟に対応することが大切です。市場は常に変動し、消費者のニーズも変化します。ポジショニングを一度設定したからといって、それを固定的なものとして扱うのではなく、定期的に見直しを行い、必要に応じて調整することが重要です。

明確なメッセージの発信
明確で簡潔なメッセージを発信することが求められます。複雑なメッセージや多くの要素を詰め込むと、消費者に伝わりにくくなります。シンプルでわかりやすいメッセージを設定し、消費者に対して一貫して伝えることが成功の鍵となります。

長期的な視点
長期的な視点でポジショニングを考えることも必要です。一時的なトレンドや流行にとらわれず、持続可能なポジションを設定することで、長期的なブランド価値を構築し、安定した市場での地位を確保することができます。

これらのポイントを考慮してポジショニングを設定することで、より効果的なマーケティング戦略を構築し、市場での競争優位を確立することが可能になります。

ポジショニング戦略の再評価

ポジショニング戦略の再評価は、企業が市場での競争力を維持し、向上させるために欠かせないプロセスです。このプロセスには、ビジネスの現状をしっかりと理解し、適切な手法を用いて関連するデータを分析することが含まれます。

  1. まず、ポジショニング戦略を再評価するためには、事業の内容や意味を明確に理解することが重要です。会社が提供する商品やサービスが市場でどのように認識されているかを把握するために、情報を収集し、資料を整理することが必要です。これには、セミナーやコラム、動画などのコンテンツを活用することがおすすめです。
  2. 次に、ポジショニングの違いを評価するために、業界内の競合他社と比較することが必要です。これには、広告や販売データ、経営の実績などのデータをダウンロードして分析します。ポジショニングマップやランキングを使って、異なる企業の立ち位置を視覚的に一覧で把握することができます。
  3. ポジショニング戦略の再評価では、顧客層の属性やニーズを理解することも重要です。顧客層は年齢や性別、関心事などで分類され、各カテゴリーごとに異なるニーズを持っています。これを基礎として、ターゲット市場の条件を再確認し、適切な施策を実行するためのヒントを得ます。
  4. ポジショニング戦略の再評価には、新規市場への参入も含まれます。新しい市場に向けて、ユニークな商品やサービスを開発し、既存市場での強みを活かして新たな機会を探すことが求められます。これには、ノウハウの蓄積と学びが重要です。
  5. また、ポジショニング戦略の再評価においては、正しく市場の動向を意識し、継続的に見直しと改善を行うことが必要です。これにより、企業は常に市場の変化に対応し、競争力を維持することができます。
  6. 最後に、再評価の結果をもとに、新しいポジショニング戦略を決める際には、企業の利益や整合性を考慮しながら、効果的な施策を選択します。これにより、企業は市場での競争力を向上させ、長期的な成功を収めることができます。

ポジショニング戦略の再評価は、企業の経営において重要な役割を果たします。全体としてのビジネス戦略の一部として、定期的に見直しを行い、市場の動向に適応していくことが求められます。

ポジショニングの成功例(カフェX社)

X社は「サードプレイス(家庭や職場に次ぐ第三の場所)」というポジショニングを採用しました。このポジショニングの核となるのは、消費者にとって家庭でも職場でもない、新たな憩いの場を提供することです。具体的には、以下のような要素を取り入れました。

居心地の良い環境: 快適な椅子やソファ、温かみのある照明、落ち着いたインテリアを備えた店舗環境を作り出しました。これにより、消費者がリラックスし、長時間滞在できる場所を提供しました。

高品質のコーヒー: X社は、上質なアラビカ豆を使用したコーヒーを提供することで、消費者に高品質なコーヒー体験を提供しました。バリスタによる丁寧な淹れ方や多彩なメニューも魅力の一つです。

多様な利用シーン: 消費者が友人との会話を楽しんだり、読書をしたり、仕事をしたりと、様々な目的で利用できるように設計されました。無料のWi-Fiや電源コンセントの提供もその一環です。

コミュニティの一部: 地元の文化やアートを取り入れた店舗デザイン、地域イベントの開催などを通じて、消費者にとって身近で親しみやすい存在を目指しました。

結果:X社はこの「サードプレイス」というポジショニング戦略により、急速に成長し、世界中に店舗を展開しました。以下のような成果を上げました。
①ブランドロイヤルティの構築: X社は、消費者にとって居心地の良い場所として認識されることで、強いブランドロイヤルティを築きました。多くの消費者が日常的に訪れる場所となり、「スターバックスに行く」という行為が生活の一部となりました。
②競合他社との差別化: 「サードプレイス」というコンセプトは、他のコーヒーチェーンやカフェとは一線を画すものとなり、X社は競合他社との差別化に成功しました。単にコーヒーを提供するだけでなく、居心地の良い空間を提供することで、消費者に独自の価値を提供しました。
③グローバルな展開: X社の成功はアメリカ国内にとどまらず、世界中に広がりました。多くの国や地域で同じコンセプトを持つ店舗を展開し、国境を越えて多くの消費者に愛されるブランドとなりました。
④持続的な成長: X社は「サードプレイス」というポジショニングを維持しながら、メニューの多様化や店舗デザインの進化、デジタルサービスの導入などを通じて持続的な成長を続けています。消費者のニーズに応じた新しい体験を提供し続けることで、常に新鮮で魅力的なブランドとしての地位を保っています。

結論:X社の「サードプレイス」ポジショニングは、コーヒーショップを単なる飲み物を提供する場所から、消費者がくつろぎ、交流し、仕事をするための居心地の良い第三の場所へと昇華させました。この戦略は、消費者の生活に深く根付いたブランドロイヤルティを築き、競合他社との差別化を実現し、グローバルな成功を収める原動力となりました。X社の事例は、消費者のニーズやライフスタイルに密接に寄り添うポジショニングの重要性を示しています。

ポジショニングの失敗例(飲料メーカーA社)

背景:1980年代初頭、A社は市場シェアを落としていました。主要な競争相手であるB社は、革新的なマーケティング戦略を展開し、消費者にA社とB社の味をブラインドテストで比較させるキャンペーンを実施しました。このテストで、多くの消費者がB社の味を好むと答えました。これはA社にとって大きな打撃となり、同社は市場でのポジションを再考する必要に迫られました。

戦略:A社は、B社に対抗するために、長年愛されてきたA社のレシピを変更し、新しいレシピを発売することを決定しました。この新しいレシピは、B社の甘味に近づけたものでした。A社は、より甘くて飲みやすい味が消費者に受け入れられると信じていました。この戦略の背後には、ブラインドテストでペプシが勝っているというデータがありました。

結果:A社の新商品発売後、消費者の反応は非常に否定的でした。多くの消費者は、A社の新しい味に不満を抱き、オリジナルの味を求める声が大きくなりました。消費者の間では、A社のブランドに対する強い愛着があり、長年親しまれてきた味が変更されたことに対する反発が広がりました。A社には抗議の手紙や電話が殺到し、消費者の怒りは全国に広がりました。わずか数ヶ月後、A社は消費者の声を受け入れ、オリジナルのレシピを復活させました。新商品は市場から姿を消し、ブランドのイメージを回復するための努力が続けられました。

失敗の原因:
①消費者感情の過小評価: A社は、消費者がブランドに対して持つ感情的なつながりを軽視しました。消費者にとって、A社の味は単なる飲み物以上のものであり、文化的なアイコンであったのです。
②ブランドの価値を理解していなかった: A社は、長年培ってきたブランドの価値や歴史を十分に考慮せず、新しい製品を導入しました。消費者はA社に対して強いブランド忠誠心を持っており、それを無視することは大きなリスクでした。
③市場テストの不足: ブラインドテストの結果に基づいて新商品を導入しましたが、実際の市場環境や消費者のフィードバックを十分に検証しませんでした。テスト環境と実際の消費者行動にはギャップがありました。
④コミュニケーション不足: 新製品の導入に際して、消費者との対話や教育が不足していました。突然の味の変更に対する消費者の理解を深める努力が不足していました。

結論:A社の失敗は、消費者の感情やブランドの価値を軽視したことが主要な原因でした。この経験から学び、A社は消費者の声を真摯に受け止め、ブランドのコアバリューを尊重する重要性を再認識しました。この教訓は、他の企業にとっても、消費者との深いつながりとブランド価値を理解することの重要性を示すものとなっています。

最後に

マーケティングの戦略立案から実行支援まで一貫して提供する船井総合研究所では、絶えず変化する消費者のライフスタイルに対応したマーケティング支援を行い、優れた顧客体験を設計することが可能です。
現代の消費者は、日々の生活や価値観が急速に変化しており、企業はその変化に迅速に対応することが求められています。船井総合研究所は、最新の市場動向や消費者の行動パターンを分析し、それに基づいた戦略を立案します。
そして、実行支援に至るまでの全てのプロセスを包括的にサポートすることで、企業が消費者に対して一貫したメッセージと体験を提供できるようにします。このような総合的なアプローチにより、企業は競争力を高め、顧客との信頼関係を強化することができます。


執筆: B-search

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