■社会保険労務士事務所のビジネスモデル
社会保険労務士の主な業務は、社会保険や労働保険の手続きの代行です。
これらを社労士登録してない者が生業として行うと違法になるため、起業のためには専門資格の取得が必要となります。
資格取得後は、企業と顧問契約を結べば安定した収益が得られます。
また、資格を取る過程では労働や保険に関する法律を学ぶため、その知識を生かしたコンサル業などを行う場合もあります。
■社会保険労務士事務所の取り巻く現状
1.社会保険労務士の受験者は減少傾向にある
厚生労働省の第52回社会保険労務士試験の合格者発表によると、過去10年間の受験者数は、2010年55,445人から2020年には34,845人まで減少しています。
AI化により士業のニーズが減るといった声をよく聞くようになったことや、資格をとっても稼げない、というイメージが先行していることが背景にあると考えられます。
2.働き方改革がビジネスチャンスとなる
2018年に通常国会で働き方改革関連法(正式名「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)が成立したことは社会保険労務士にとってビジネスチャンスとなりうる状況です。
働き方改革により日本の企業全体で働きやすい労働環境づくりに関心が高まっており、中小企業の就業規則や労務関係のニーズも高まっています。
社会保険労務士が必要となる関連業務も増えており、良い流れであると言えるでしょう。
3.1号業務と2号業務は減少が予想される
社会保険労務士の1号業務、2号業務とは申請書や帳簿作成などです。
これらの業務はAIを活用した人事労務管理ソフトが普及する中、人手が必要となる業務は縮小しています。
人事労務管理ソフトを使用すれば、政府の電子申請の窓口である「e-Gov」にも直接申請ができます。
そのため、労働・社会保険の知識がない企業内の従業員でも簡単に申請が行えるようになり、この分野の業務は社会保険労務士のニーズが減少していくことが予想されます。
■おすすめの方
社会保険労務士事務所がおすすめの方は、以下の通りです。
・コンサルティングが得意
・働き方改革の発展に貢献したい
・企業との人脈がある
上記のような方々は、働き方改革の流れに乗ったビジネスチャンスを掴み、社会保険労務士事務所の経営を成功できるため、おすすめのビジネスモデルです。
■成功のポイント
1.コンサルティング業務に力を入れる
社会保険労務士の日常業務である1号、2号業務はAIによって取って変わる時代が来ています。
しかし、相談が主となるコンサルティング業務はAIが人に変わることはできない分野です。
特に、働き方改革に伴う法改正に伴って、細かい就業ルールの見直し等を始めている企業は多く、専門家によるコンサルティングが求められています。
今後は単なる申請業務をこなすだけではなく、起業の悩みを聞き解決策を提示していく、コンサルティング業務に力を入れるなら、安定した収益化が図れるでしょう。
2.助成金マーケットに力を入れる
中小企業にとって、返済不要で利益に直結する助成金の申請は経営において大きなメリットがあります。
しかし、助成金の数は厚生労働省管轄だけでも50種類以上、経済産業省系では数百と膨大な数があり、自社が活用できる助成金を調べるだけでも大変な情報量となります。
それに加え、受給要件や申請資料作成も複雑なため、せっかくの制度を活用できていない中小企業も多くあります。
そこで、助成金情報の発信や申請サポートを積極的に行うなら、ニーズのある企業からの依頼を受けられるでしょう。